第四章 〜不死鳥と名前〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「マルコちゃん、マルコちゃんいる?」
まだ診療時間にもなっていない早朝。
ミドリの祖母がマルコの診療所を訪れていた。
「どうした、ばあちゃん。えらく早いな。」
マルコはまだ眠そうに目を擦りながら
声がした方へ顔を出す。
と、疲れ切った様子の祖母が
杖をつきながら早足にマルコへとすがった。
「マルコちゃん、ちょっと手を貸して!」
「おい、大丈夫かよ。あんま調子良さそうじゃないな。」
マルコはその様子に
焦って祖母を椅子へ座らせる。
「ミドリがここへ来てない?昨日から帰ってないのよ。」
「ミドリちゃんが?」
あのばあちゃん思いのミドリちゃんが
一晩連絡もなく家に帰らないなんて
何かあったに違いねェ。
祖母の様子から、マルコはすぐに異様な事態を察した。
「ミドリちゃん、昨日どこかに行くとか言ってなかったのか?」
「山にね、野草を取りに行くって、朝からはりきって出かけて行ったのよ。」
「山へ…?」
「少し帰りが遅いとは思ったんだけど、私は先に寝てしまって…さっきまだ帰ってないことに気付いてこの辺りを探したんだけど……」
心配で今にも泣き出しそうな祖母をなだめるよう、肩に手を置くマルコ。
「大丈夫だよい。俺が見つけてくる。ばあちゃんはここで待っててな。」
安心させるように笑顔を向け
そのまま診療所を飛び出した。
「……飛ぶのは久しぶりだ。」
蒼白い炎を身体にまとい、不死鳥へと姿を変えながら、マルコは朝日が登り始めたばかりの空へと飛び立った。
無事でいろ。
島の真ん中に堂々とそびえ立つ山を目指しながら
マルコはそう願わずにいられなかった。