第四章 〜不死鳥と名前〜
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おもむろに手を伸ばしてみるけど
予想通り届かない。
「……少し降りてみようかな…」
バランスを崩すと危ないので
背中に背負っていたリュックはその場に下ろし、薬草を入れる袋だけを手にかけて
しゃがんだ状態から足を伸ばして少しずつ下へ降りていく。
「うん、行けそう。」
木の枝に掴まって、少しずつ降りながら薬草を抜いて袋に入れていく。
これを見せたら
マルコさんはどんな反応をするかな。
喜んでくれるといいな。
マルコさんの喜ぶ顔を頭に浮かべて
つい口元がゆるむ。
——と、その時だった
「きゃっ!」
ザザザザザッ——
ぬかるみに足を取られてバランスを崩した瞬間に
木の枝から手が離れ
そのまま斜面を転がるように滑り落ちてしまった。
ドンッ——
「いったぁ……」
尻もちをついて、やっと止まったかと思うと
そこは足も伸ばせないほどの狭い場所。
すぐ先はまた崖にも近いような斜面だった。
これ以上下に落ちていたら、と思うとゾッとする。
上を見る。
登って元の道へ戻ろうと思ったけど、甘かった。
掴まれそうな木はなかったし
たっぷりと雨を吸い、ほとんど日の当たっていないぬかるんだ斜面は
そう簡単に登らせてくれそうになかった。
何より、打った腰が痛くて立ち上がることもできない。
「どうしよう……」
途方に暮れる、とはこういうことだ。
何かないかと周りを見回したけれど
当然何もなく、木々の間から青い空が見えるだけだった。
「……あ…リュック……」
さらに荷物を全て入れていたリュックを上に置いてきたことを思い出し、絶望を感じる。
水も食料も全てあの中だ。
もう一度、登ってみようと試みる。
けれど、立ち上がった瞬間に全身のあらゆる箇所がズキズキと痛んで
座り込むしかなかった。
よく見ると腕は傷だらけ。
落ちた時に擦ったんだろう。
服で見えないけど、他にも怪我をしているところがありそうだ。
あの薬草が入った袋だけが
左手にしっかりと握られていた。
「何やってんだろ………」
涙が出てくる。