第三章 〜彼の手とヤキモチ〜
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完全に盲点だった。
マルコさんはとてもモテるんだ。
私は一番身近な男の人だったから
嘘の恋人役にマルコさんを選んだけど
常に男の人が少ないこの村で
年頃の女の子たちがマルコさんに目を付けるのは当たり前だ。
確かに私は村の女の子たちの中では
地味な方だと思う。
あの子たちからしたら
そんな私で彼女になれるなら自分の方が、
と思うに違いない。
面倒なことに、敵を作ってしまった。
「はぁ……」
マルコさんと嘘のお付き合いを始めてからというもの
自分の頭では抱えきれないほどの悩みが
次から次へとやってくる。
そんな想いがため息となって出てくる頃
ちょうど診療所に着いた。
「なんだ?朝からため息かよい。」
コーヒーを煎れながらマルコさんがこちらを見る。
今日もメガネに白衣姿がカッコいい。
これは女の子たちも夢中になるわけだ。
なんて、納得している場合じゃない。
「お、おはようございます!すみません、遅くなりました!」
「まだ誰も来てないから大丈夫だ。コーヒー飲むか?」
「あ、じゃあいただきます。」
荷物を置いて、テーブルに着いて
マルコさんの煎れてくれたコーヒーを口に含む。
さっきまでここで楽しそうに彼女たちと話をしていたんだ、と思うとなんだか胸がモヤモヤした。
と、テーブルの端に紙袋が置いてあることに気付く。
「これは?」
「あぁ、さっきまで村の子達が来てたんだ。昼飯作ってくれたんだと。」
「お弁当ですか?」
「みたいだな。」
マルコさんは特に気にも留めていないように
カルテに目を通しているけど
私は中身が気になって気になって仕方がない。
仮にも彼女がいる人に、手作り弁当を差し入れしてくるなんて。
モヤモヤを通り越して、私はだんだんと腹が立ってきた。
「マルコくん、いるか?」
「おう!今行くよい!」
患者のおじいちゃんに声をかけられ
私の腹の虫は治まらないまま仕事が始まった。