プロローグ
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「よう、ばあちゃん。調子は?」
「あらマルコちゃん。今日はいいわよ。」
「だから、その呼び方はよしてくれよい。」
家の大きな掃き出し窓から
ひょっこりと顔を出す大きな男。
名前はマルコさん。
職業は医者。
おばあちゃんを心配して
こうやってよく様子を見に来てくれる。
——が、正直私はこの人をあまり信用していない。
「いい匂いがするな。」
おばあちゃんの往診を終えると
器具をカバンにしまいながら
マルコさんはこちらに顔を向けた。
「ミドリが夕飯の支度をしてくれているのよ。よかったらマルコちゃんもどう?」
「マルコさんの分はありません。」
「ミドリ!」
「いいんだよい。俺はまだ行くところがある。ばあちゃん、調子が良くても無理は禁物な。」
「はいよ、ありがとうね。」
「ミドリちゃんも、またなァ。」
「ありがとうございました。」
目は合わさずに、頭だけ下げる。
「ミドリ、お医者さんにあんな態度取っちゃダメだって言ってるでしょ。」
マルコさんが帰ると
先ほどのことをおばあちゃんに叱られた。
同じことで、これまでにも何度か叱られている。
「だってあの人、元々海賊でしょう?」
「過去は関係ないの。いつも気にかけてくれるし、ちゃんと診てくれるし、すごく優しい人じゃない。」
「でも診察代も治療代も薬代もいらないなんて、何か企んでるんじゃないかって思っちゃう。」
「あらあら。いつからそんな捻くれた子になっちゃったんだろうね。」
たしかに優しくて、表向きはいい人だとは思う。
村の皆にも慕われているし
きっと医者としての腕も確かなんだろう。
でも、裏の顔はわからない。
元海賊、しかもあの大海賊・白ひげの右腕を務めていたような大物が
どうして突然こんなへんぴな村にやってきて
人助けをしているのか。
私には何か裏があるような気がしてならない。
ただ平和ボケしたこの村の人たちは
疑うということをあまり知らず
こんな考えを持っているのは私だけのようだった。
その気持ちが
ついああいった態度に出てしまうのだろう。
難しい顔をして考えて込んでいると
おばあちゃんがイタズラに笑った。
「独り身のようだし、ミドリをお嫁さんにもらってもらえるといいんだけどね。」
「冗談でしょ!」
これは、そんな私と
村に現れた医者、マルコさんの
ひとつの”嘘”からはじまるお話。