第二章 〜交換条件と嘘のはじまり〜
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それから、私はマルコさんの診療所で過ごすことが多くなった。
治療費の代わりに、と
患者さんが置いて行ってくれる食料や生活物資を、マルコさんは私にも分けてくれたので
他の仕事をせずに済んだ。
私の仕事といえば
診療所の整理整頓をはじめ、医療器具のお手入れ、カルテの管理、マルコさんが往診に行っている間の留守番など。
「若い嫁さんもらったなァ、マルコ。」
「羨ましいだろい。」
「良い子が見つかってよかったわねェ、マルコちゃん。」
「あぁ。俺には勿体ねェ。」
診療所に来るおじいちゃんやおばあちゃんには
すっかり夫婦に間違えらていた。
少し前まで、私はこの人を疑っていたはずなのに
夫婦と思われても不思議と嫌な感じはしなくて
自分で自分の気持ちの変化に驚いている。
ーーーーーー
そんな生活が2週間ほど続いた、ある日。
「マルコさんはどうして否定しないんですか?」
午後は大体往診に出るマルコさん。
今日は最後に私のおばあちゃんの所にも行くというので、手伝いに着いてきた。
うちへ向かう途中、気になっていたことを聞く。
「何の話だよい?」
「村の皆、私たちが夫婦だと思ってますよ?」
「俺たちは恋人なんだろ?だったら夫婦でもそんなに変わらないだろうよい。」
マルコさんは楽しそうに笑った。
この人はこの状況を楽しんでいるようだ。
「…まぁ確かに、そうですけど。」
「聞きたかったんだが…」
「はい?」
「恋人のフリってのは具体的に何をすればいいんだ?」
「……すみません、実は私もまだピンときてなくて…でも、とりあえず今日おばあちゃんに言おうと思うので、それっぽく振る舞ってくださいね?」
「任せろよい。じゃあ手でも繋ぎながら行くか。」
「えっ、べ、別に今おばあちゃんが見てるわけではないし…えっと…どうしよう。」
「冗談だよい。」
急な提案に慌てる私を見て
マルコさんはイタズラな笑顔で笑った。
「からかわないでください!」
冗談を本気に受け止めてしまって
恥ずかしくなる。
隣を歩くマルコさんの大きな手が視界に入って
さらに顔が熱くなった。