第二章 〜交換条件と嘘のはじまり〜
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「ほら。これで大丈夫だ。」
「うぅ…いたかった……」
「もう泣くな。男だろい。」
マルコさんが頭を撫でると
男の子は泣き止んで、家へと帰っていった。
「ありがとな、ミドリちゃん。」
「いえ。こちらこそ、ありがとうございました。」
先ほどまで考えていたことが頭に過ぎって
まともにマルコさんの顔が見られない。
大きな体
指が長く骨張った手
大きく開いたシャツから覗く鍛えられた胸元
今まで男の人とあまり関わってこなかったから
マルコさんを意識して見てしまうと
なんだかソワソワして落ち着かない。
「ばあちゃんの様子はどうだ?今日は行けなくてごめんな。」
「最近は落ち着いています。それにしても…」
私は辺りを見回す。
デスクの上に乱雑に積まれたカルテの山。
何着も脱ぎ捨てられた白衣。
医療器具こそきれいに並べられているものの
診療所の中は整頓されているとは言えない状態だった。
男の人ひとりだとこうなってしまうのだろう。
「片付けは苦手なんだよい。」
私の視線に気付いたのか
マルコさんは頭を掻きながら笑った。
「洗濯機はどこですか?」
「奥の部屋だが…ミドリちゃん?」
「これだけ洗っちゃいます。マルコさんはお仕事していてください。」
小さい頃から家事の全てをおばあちゃんから叩き込まれてきた私は
その状態を見過ごすことができず
散らばった白衣やタオルを集め
ついでにベッドのシーツまでも洗濯機に詰め込んだ。
「なんか悪いな。でも助かるよい。」
「いいえ。掃除洗濯得意なんです。」
余計なことだったかと心配になったけど
マルコさんが嬉しそうに笑ってくれたので安心した。
洗濯が終わるまで診療所内の掃除をすることにした。