番外編 〜最後の手料理を〜
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茹でたキャベツで丸めた肉ダネを巻いていく。
工程が多くて、大人数に作るには大変な料理だけど
少しも苦じゃなかった。
むしろキッドのリアクションを想像すると
作るのがとても楽しかった。
きっと喜んでくれる。
そう思いながらテーブルに並べていると
お腹を空かせたクルー達が次々と集まってきた。
「いい匂いだな。」
「あ〜腹減った!」
でも、肝心のキッドがなかなか現れない。
「キッドは?」
「お頭?部屋にこもって何かしてたぜ。」
もう昼食の時間だっていうのに。
せっかくのロールキャベツが冷めちゃう。
「私呼びに行ってくるね。先に食べてて。」
「「「いただきまーす!!」」」
コンコン——
「キッド?お昼ご飯できたよ!?」
この部屋は、キッドに「好きだ」と言われて
そしてすぐに「忘れろ」と言われ
泣きながら眠った場所。
色々な想い出が詰まりすぎていて入るのに気が引けたから、ドアの前から声をかけた。
「ねぇ、食べないの?」
「あぁ、いらねェ。」
キッドからの返事は
何とも心ないものだった。
「どうして?お腹でも痛い?」
「食いたい気分じゃねェんだよ。放っとけ!」
なんだか機嫌が悪いみたい。
私は仕方なくキッチンへ戻った。
ダイニングでは、皆が美味しそうに
ロールキャベツを食べてくれていた。
「キッドは?来ないのか?」
落ち込む私の様子を察して
キラーが声をかけてくれた。
「いらないんだって……」
「……また何か怒らすようなことしたのか。」
「それが、心当たりなくて……」
「そのうち食べに来るだろ。キッドの分取ってあるんだろ?」
「うん。お鍋に残ってる。私少し外に出てるね。」
「あぁ。」
甲板に出て海を見る。
気候は安定していて
やわらかな風が流れていた。
私がいつも自分の島で感じていた春の風だ。
もう近い。
キッドのバカ。
もうすぐお別れなのに。
キッドのために作ったのに。