第六章
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「さ、避けてなんかないってば。離してよ。」
睨み付けてやると、キッドは舌打ちをしながら手を離す。
「まだ怒ってんのかよ。」
「何が?」
「てめェにキスしたことだよ。」
「なっ……」
一生懸命忘れようとしていることをサラッと言われてしまい、一瞬言葉に詰まる。
「あっ、あんなのねぇ!何にも気にしてないから!蚊に吸われたようなものだし!いつまでも怒るようなことじゃないよ。」
「焦りすぎだ。思い出させて悪かったな。」
私のわかりやすい焦り方にキッドは笑った。
これ以上墓穴を掘る前に、ここからどう逃げ出そうか悩んでいると
ドアが開きキラーが入ってきた。
救いの神!
「キッド、ここにいたのか。島に入る偵察班を決めるぞ。」
「おう。」
ーーーーーー
島に着いた。
そこには砂浜が広がっていた。
太陽がジリジリと照りつける、夏島だった。
イカリを下ろし、偵察班の皆はズボンの裾を上げ船から降りると、ビチャビチャと海面に足を濡らしながら上陸する。
なんだかリゾートのビーチのようで、広がる景色に私もワクワクしていた。
「私も降りていい?」
下にいるキラーに声をかけると
手を上げてくれる。
「あぁ。俺たちは見回りに行って来る。」
「いってらっしゃい!気をつけてね!」
キラーに手を振ると、隣にいたキッドがこちらを振り返る。
私が咄嗟に手を下ろすと
キッドも顔を背けてしまった。
ビーチの奥には見るからに深そうなジャングルが広がっていて、奥が見えない。
偵察班の皆はそのジャングルへと入っていった。
今回はキッドも偵察班と一緒に行ってしまったので、少しホッとした。
船から降りる。
足を濡らしながら波打ち際を歩く。
熱い日差しの中、冷たい海の水が気持ちいい。
水着に着替えて泳ぎたい気分だったが
皆が仕事をしている中、一人バカンスをするのは気が引けるので、足だけで我慢した。
甲板から、船番の仲間達が顔を出す。
「ミドリ、そこにいたのか!」
「あんまり船から離れるなよ!何がいるかわからねェぞ!」
「うん!ありがとう!」
規則正しく聞こえる波音。
太陽に照らされて輝く海面に、白い砂浜。
雲ひとつない真っ青な空。
全てが雄大で清々しく
さっきまでウジウジと悩んでいた私の心を癒してくれるようだった。
どこまでも広がる空と海。
私の悩みがどれほど小さいものかを教えてくれる。
——そんなちっぽけなことで悩んでいないで
あなたの思うように生きなさい。
そんな声が聞こえてきそうだった。
胸のつかえが少しスッキリした気がする。
キッドとも、普通に接することができそうだ。