〜第九章〜
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あっという間にその日はやってきた。
ついに今日、コビーとするんだ……
朝から心が落ち着かないまま一日中仕事をして、夕食後にシャワーを浴びて部屋を出ると
「お疲れ様。」
コビーが私の部屋の前で待っていてくれた。
「迎えにきてくれたの?」
「あ…うん。部屋で待ってたんだけど、なんとなく落ち着かなくて。」
コビーは少し恥ずかしそうに頬を掻いた。
2人並んで歩いてコビーの部屋へ向かう。
今夜ことを思うと、私も緊張したし
コビーの緊張も伝わってきた。
「ごめんね。本当はこの前みたいないいホテルとか、雰囲気のあるところへ連れて行ってあげたかったんだけど。」
「ううん。コビーの部屋がいい。」
笑顔でそう答えれば
コビーは周りに人がいないのを確認して
手を繋いでくれた。
今日を最後にしばらく会えなくなる。
そう思うと涙が出そうになった。
コビーの部屋に着くと
テーブルにお酒とおつまみが用意してあった。
「少し飲んだ方が緊張がほぐれるかと思って。」
「そうだね。ありがとう。」
明日コビーが旅立ってしまえば、次はいつこうやってゆっくり会えるかわからない。
私もコビーもそんなにお酒が強い方ではないけど、ゆっくり飲みながらたくさん話をした。
これから会えなくなる分まで、たくさん。
夜も遅い時間になってきて、私は少し心配になる。
「明日は…何時に本部を出るの?」
「8時の船だから、6時には起きないと。」
「早起きじゃん!そろそろ…寝ないと……」
言いながら鼓動が速くなるのがわかった。
ついに“その時“がきたということだ。
ちょっとした私の動揺に気付いたのか
コビーは正座して改めて私に言う。
「ミドリ…本当にいいの?その…今から……」
私は深く頷いた。
覚悟はできている。
もちろん初めてのことだし、不安がないわけではないけど
コビーとなら大丈夫。
「僕初めてだし…情けないけど、うまくできるかわからないし、痛い思いをさせちゃうかもしれない。そしたらすぐに言って欲しい。」
「うん。わかった。」
ベッドに座り、手元明かりだけになる。
薄暗くて静かな部屋の中。
私の心臓の音がコビーに聞こえちゃうんじゃないかというくらい、ドキドキがうるさい。
背中を手で支えられながら、ゆっくりと体が倒される。
コビーも上に重なって、見下ろされる。
「……できるだけ優しくする。」
「うん、大丈夫。きて。」
だんだんと顔が近付いてきて、目を閉じる。
それは静かな口付けから始まった。
バンダナもメガネもしていないコビーの前髪が顔の上で揺れる。
でもそんなのは気にならないくらい、夢中になってキスをした。
頬に、おでこに、耳に、首筋に
何度もキスが落ちてくる。
そのキスの優しさとコビーの体の熱を感じて
私はそのまま全てを委ねる。
その夜
満月の明かりが部屋を照らす中
私たちは初めてひとつになった。