肌を重ねたなら ver.s
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遠くなった仲間たちの声を聞きながら
キッチンに立ち、グラスを洗う。
いつも通り、綺麗に整頓されている調理場。
生ゴミ入れには無駄なく剥かれた
オレンジやリンゴなどの果物の皮が入っていた。
先ほどまでここでサンジが私へのジュースを
作ってくれていた名残だろう。
思い浮かべて頬が緩んだときだった。
ダイニングの扉が開き、目を向けると
プールから上がった彼が立っていた。
「あれ?もうプールは終わり?」
「あァ。あいつらはまだ遊んでるよ。」
上半身を露にして
濡れた髪をタオルで拭きながら
やって来るサンジが、あまりにも色っぽくて
私は慌てて目を逸らす。
「お茶でも淹れようか?それとも何か作る?」
「ううん。大丈夫。ありがとう。」
ついさっき誘いを断ってしまった手前
なんとなく2人きりは気まずくて
洗い終えたグラスを片付け
水を飲む彼の横をすり抜けて
キッチンを離れようとしたとき
「ミドリちゃん、待った。」
素早く手首を掴まれた。
「な、何?」
思わず身構えると
サンジは顔を覗き込むように見つめてくる。
「抱き締めていいか?」
髪からはまだ水が滴っていて、それが妙に艶っぽく
加えてそんな言葉を言われてしまったら
私の心臓は跳ね上がる。
「誰か来ちゃうよ。」
「大丈夫だよ。」
掴まれていた腕を引き寄せられて
そのままギュッと抱き寄せられた。
直に触れる引き締まった身体は
プールに入っていたせいか、少し冷たく感じる。
私の背中を抱き寄せる腕には力が込められて
反対に髪を撫でる手つきは
壊れものに触れるかのように優しく
私の頭を胸に抱く。
この温もりはずるい。
もう、求めちゃいけないものだったのに。
あまりにも心地良くて、大好きで
拒否しようと思えばできるのに
私はそのまま動けずにいた。
「……ミドリちゃん、女の子の日じゃなかったんだな。」
「……えっ、どうして…」
「なァ、おれとはもうしたくない?」
サンジの表情は
怒られた子どものようにどこか不安げで
「嫌になった?」
そんな顔で見つめられてしまったら
情けないことに私の決意は簡単に揺らぐ。
「……嫌、じゃない…」
目を見つめ返してそう言えば
彼の顔が近付いてきて、唇と唇が重なる。
あぁ、ダメだ。
受け入れるべきじゃないって
頭ではわかってるのに。
気付けば頭の後ろを優しく抑えられて
ついばむように唇を吸われて
だんだん深く、激しく
次第に唇だけでは物足りなくて
どちらからともなく舌を絡ませていく。
初めてキスをしたこの場所で
もう数え切れないほど触れ合った。
サンジとのキスはいつも媚薬のようで
どうしても拒否できない。
だんだんと回らなくなってくる頭で考えた。
もう身体だけの関係はやめる。
そう思ったけど
結局この男の心が手に入らないのなら
せめて体だけでも私のものに……
サンジの首に腕を回すと
それに応えるようにサンジの両手が
私の体のラインを撫でる。
あぁ、また繰り返す。
こんな場所で、また、してしまう。
また、傷つくことになる。
それでも、今は触れて欲しい。
私を好きじゃなくても……
愛していなくても……