肌を重ねたなら ver.s
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島を出て、海の上を進む毎日が続いていた。
胸元の痕が消える頃
あぁ、最近触れられてないな、って恋しくなる。
「ミドリちゃん。」
甲板で海を眺めていると
今まさに考えていた相手から不意に名前を呼ばれ
ドキッとした。
「何?」
平静を装って笑顔を作り、振り返れば
嬉しそうなサンジの笑顔があった。
「見たことないワンピースだね。」
「これ?この前の島で買って、初めて着たの。今日は暖かいから。」
「可愛いよ。よく似合ってる。」
そっと伸びてきた大きな手に
指先を優しく掴まれてビリリと身体に電気が走る。
その手を振り払って、サンジに背を向けた。
「やめて。誰かに見られちゃう。」
「あァ、そうだな。悪かった。」
……少し冷たい言い方しちゃったかな。
寂しそうな声色になったサンジに
慌てて訂正をする。
「あの…触って欲しくないわけじゃなくて、えっと……」
「わかってるさ。大丈夫。」
向けられた笑顔に、さらに鼓動は速くなる。
サンジに触れられると
そこが熱くなって、胸が苦しい。
サンジは周りを見回して
誰もいないことを確認してから耳打ちをしてきた。
「ミドリちゃん、今夜皆が寝たら、キッチンで待ってていいか?」
「え……」
島を出て以来、久しぶりの誘いだった。
「……ごめん、あの…今日はちょっと……」
視線を逸らしてしまった。
感じ悪い。
サンジからの誘いを断るのは
これが初めてだった。
「…あ、あァ、女の子の日か。ごめんな。気がつかなくて。」
何かを察したようにそう言うと
ポンポンと優しく頭を撫でられる。
キッチンへと戻っていくサンジの後ろ姿は
どこか少し寂しそうだった。
これでいいんだ。これでよかった。
こうやって断り続けていれば
そのうち誘われることはなくなる。
どんなに触れられても
キスを重ねても
抱き合っても
サンジの心が手に入るわけじゃない。
私の気持ちだけが大きくなるばかりで
苦しいだけ。
気持ちがないなら、抱かれるべきじゃない。
抱いてほしくない。
これ以上は虚しい。
大丈夫。今ならまだ、ただの仲間に戻れる。
だって、愛して欲しいなんてとても言えない。