気づかれないように
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その柔らかい感触の唇を堪能して、そっと離すと
ミドリちゃんは、とろんと力の抜けた表情で
おれを見ていた。
夢でも見ているのか。
まさか本当に、君の心がおれのものになるなんて。
確かめるように、もう一度強く抱き締める。
自分の行動を思い返して
少し落ち着けようと息を吐く。
頬にたくさんキスしちまった。
まだ互いの気持ちを確認し合ったばかりなのに
口にまで、しちまった。
がっつきすぎたか。
でも気持ちが抑えられなかった。
だってやっと
やっと、おれの長かった片想いが実を結んだんだ。
始まりは、ほとんど一目惚れだった——
ルフィが新しい仲間だ、と連れてきた君に
一瞬で心を奪われた。
恥ずかしがり屋なのか、人見知りなのか
最初は話しかけても緊張を見せていた君が
次第におれの冗談に笑ってくれたり
楽しそうに話しかけてきてくれるようになり
嬉しくて仕方なかった。
でも言えるはずはない。
まさか仲間である君に、恋に落ちただなんて。
だから、おれはいつも
気づかれないように、気づかれないように
こっそりと、君を見ていた。
おれの作ったメシを美味そうに食べる姿。
ロビンちゃんやナミさんと
楽しそうに談笑しているところ。
膝に座るチョッパーを
蹴り飛ばしたくなったこともある。
びっくりプールで遊んでいるときは
滅多に見られない水着姿に釘付けになった。
そうやって、片想いをこじらせていたおれに
転機が訪れる。
ひと月ほど前のことだ。
釣りをしていたルフィが魚を釣り上げた瞬間
制御できずに、ミドリちゃんの方向へ
巨大魚を飛ばしてしまった。
その時たまたまおれは彼女の隣にいて
今思い返せば
巨大魚を蹴り飛ばせば良かったんだろうが
咄嗟にミドリちゃんを抱き寄せて魚を避けた。
欲が出たんだ。
彼女に触れたい欲が。
やべェ、柔らかい。
顔が近い。
そう焦ってミドリちゃんを見ると
見たこともないような真っ赤な顔をして
腕の中からおれを見上げていた。
「どうした?おれの顔、何か付いてる?」
「ご、ごめん、何でもない。あの…ありがとう。」
そそくさとおれから離れるミドリちゃんは
すっかり耳まで赤くなり、明らかに戸惑っていて
ミドリちゃん、まさか。
いや、そんなことあるわけ…
でもあの態度、もしかして…
自分に都合のいいような考えが浮かんで
なぜかおれは少し焦って
それを誤魔化すように
とりあえずルフィのヤツに蹴りを入れておいた。