渇いた心、潤うとき
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気付いたら眠っていた。
カーテンから漏れる朝の光が眩しくて目が覚めた。
目の前にはサンジさんの顔。
すでに起きていたようで
目が合うとにっこりと笑顔になった。
その腕は私の体に回されていて
一晩中抱き締めていてくれたことがわかる。
「おはよう。ミドリちゃん。」
「……おはよ。」
なんだか恥ずかしくて目を逸らした。
サンジさんは優しく髪を撫でると
起き上がり、タバコに火をつけた。
「支度したらおれはもう出るよ。仲間が待ってるだろうから。ミドリちゃんは、ゆっくりメシでも食べていくといい。」
「ううん。私も帰る。」
あんなに大泣きしたのに、頭はスッキリ冴えていて
こんなに寝覚めのいい朝は初めてだ。
すごく気持ちが満たされている。
清々しい気持ちで、さよならを言える気がした。
ーーーーーーー
ホテルの前で、別れの挨拶を交わした。
「サンジさん、私ちゃんと仕事探す。パパの愛人も、男遊びもやめて、全部ちゃんとするから。」
「あァ、ミドリちゃんなら大丈夫だ。」
彼は満足気に笑った。
私に普通の仕事なんてできるのか、不安もあった。
また寂しくなったら、男と寝てしまうかもしれない。
それでも、サンジさんに言われると
本当に大丈夫な気がした。
「でも、どうしてこんな会ったばかりの女に優しくしてくれたの?」
「おれは全てのレディに幸せになってもらいたいだけだよ。」
「……本当に変な人。」
こんなに別れを寂しく思ったのは初めて。
サンジさんは昨日から
私にたくさんの初めてをくれた。
一夜限りだったけど
夢のような、幸せな時間だった。
サンジさんに愛があったのかはわからないけど
あんなに愛を感じたことはなかった。
ただ抱き合って眠っただけなのに
どんな男とするより心が満たされた。
これ以上そばにいたら
完全に恋に落ちていたかもしれない。
ううん、きっともう遅い。
唇を噛み締めた。
泣いてはダメ。最後は笑顔でお別れしたい。
こんな女いたなって
サンジさんがいつか思い出してくれた時に
笑顔の私を思い出してほしいから。
「元気でな、ミドリちゃん。」
最後に手を差し出されて、握手を交わした。
私もこの笑顔を絶対に忘れないだろう。
その手を引っ張り、精一杯背伸びをして
頬にひとつ口付けをした。
「じゃあね。サンジさん。」
驚いた顔の彼に背を向けて歩き出すと
同時に涙が溢れた。
なんだか昨日から泣き虫になってしまったみたい。
もう振り返ることはできない。
涙が止まらない。
二度と会うことはないのに
さよならもうまく言えなかった。
ありがとうも、本当はちゃんと言いたかった。
そばにいてなんて、簡単には言えないし
愛して欲しいなんて、とても言えない。
でも
あなたが私を変えてくれた。
あなたがいない世の中でも
あなたにもらった勇気を糧に
きっと強く生きていける。
サンジさん、私生まれ変わるよ。
…fin