渇いた心、潤うとき
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「私のこと?」
「どうしてこんなことするんだ?得体の知れない男と簡単に寝るなんて。危ない奴だっているだろ。」
「そんなの…サンジさんには関係ない。」
「おれはミドリちゃんに自分を傷付けてほしくないんだ。」
あぁ、本当に
これ以上はヤバい。
「慣れてるように振る舞って、男を誘って、自分の寂しさを紛らわせてるだけじゃないのか?」
そんなに私の中に入り込もうとしないで。
「ちゃんと君を大事にしてくれる相手を見つけるべきだ。」
この男の優しさは、やっぱり危険だった。
「な、何それ。内心鼻の下伸ばしてここまで来たくせに、お説教?帰る。」
逃げるように立ち上がろうとしたけど
すぐさま腕を掴まれて、そのまま引き寄せられ
一瞬のうちに彼の腕の中に収まった。
「朝まで、一緒にいる約束だろ。」
長い腕が背中に回されて
痛いほどに抱き締められている。
怒っていたくせに、突然のこの温もり。
本当に、ずるい男。
「バカな女だと思ってるくせに。」
「思ってねェよ。」
優しく髪を撫でられたら
泣いていいんだ、と言われているようで
私は静かに涙を流した。
今まで強がっていた気持ちが急に素直になって
サンジさんに自分の話をした。
彼に聞いて欲しくなったんだ。
私の母親も、男遊びの激しい女だった。
産んだ子の父親が誰なのかもわからないほどに。
子どもに愛情なんて持てるはずもなく
すぐに鬱陶しくなって、養護施設に私を捨てた。
物心ついたときからわかっていた。
私は望まれていない、いらない子だった。
「男に求められると自分に価値があるって思えたの。ただそれだけ。」
サンジさんは私の話を静かに聞きながら
ずっと髪を撫で続けてくれていた。
「ミドリちゃんの価値はそんなに安いもんじゃねェよ。」
また強く、抱き締められる。
「頼むから、自分を大事にしてくれ。」
私も自然と、彼の背中に腕を回した。
「ミドリちゃんが声をかけてくれた時、すごく綺麗な子だと思った。綺麗な服を着て、高価なアクセサリーで着飾って、装飾だけじゃなくて、君自身の笑顔も素晴らしくて。」
両頬をその大きな手で包まれて
彼の整った顔が近づく。
「でも心は泣いていただろう。」
真っ直ぐに見つめられて
目を逸らすことができない。
「こんなこと、本当はもうやめたいんじゃないのか?」
「……っ…うぅ……」
また涙が出た。
声を殺すなんてこと、もうできないほどに
子どものように泣きじゃくった。
嗚咽が漏れて、肩が震えて
何度も鼻を啜って
いい歳して、人前でこんなに号泣してしまうなんて
サンジさんのせいで
私が私じゃなくなったみたい。
「体だけでなく、ちゃんと君の心を愛してくれる人が必ず現れるよ。」
その大きな胸に顔を埋めて泣き続けた。
私とお揃いのバスローブが濡れても
彼は気にも留めず、優しく背中を撫でてくれていた。