渇いた心、潤うとき
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「サンジさん、明日ここを出るなら、今晩私とどう?」
「……どうって?」
「意味わかるでしょ?私のうちでもいいし、このままホテルでも。」
私からの誘いに驚いたようで
サンジさんは目を見開いた。
グラスを置いて距離を詰め、顔を近付け
彼にだけ聞こえるような小声で、耳元で囁く。
「好きにしていいよ。それに、サンジさんのしてほしいこと、何でもしてあげる。」
この言葉でNOと言う男とは出会ったことがない。
案の定、彼も表情を変えた。
「それじゃあ朝まで…一緒にいてくれるか?」
「うん、もちろん。」
残っていたお酒を飲み干し
吸いかけのタバコを灰皿に押し付けて
彼が立ち上がったので、私も席を立った。
サンジさんは当たり前のように
私の分の会計も済ませてくれて、一緒に店を出る。
夜の街を並んで歩く。
さりげなく腕を絡めた。
歩き慣れている街並みなのに、隣にいるのは海賊で
これから犯罪者と寝るんだと思うと
なんだかスリル満点で、すごくドキドキした。
「こんないいホテル、いいの?」
「あァ、せっかくだからな。」
サンジさんには内緒だけど、そこは私がこれまでに
何度も来たことがあるホテルだった。
きっとフロントマンも私の顔を覚えているはず。
また違う男…とでも思われていることだろう。
どうでもいいけど。
「ミドリちゃん、腹減ってる?何か頼もうか?」
部屋に入るなり
すぐに服を脱がしにかかる人もいるというのに
サンジさんは一切がっついた様子はなく
その気遣いはやはりとてもスマートで
本当に魅力的な男性だと思った。
スーツを脱いだ彼の背中にそっと抱きつく。
「いらない。シャワー浴びてくる。一緒に入る?」
見た目は細身なのに、触れてみれば意外と筋肉質で
早く素肌にも触れてみたいとこっそり思った。
男らしい大きな背中に顔を埋める。
思えば、こんなふうに
自分から男に抱き付くなんてことは初めて。
私は相当彼のことが気に入ったんだ。
「おれは後でいいよ。」
彼の胸元へ回された私の手。
その指の間をなぞるように自分の指を絡ませながら
さりげなく腕を解いてこちらに振り返り
サンジさんは腰をかがめて視線を交えてきた。
「先に入っておいで。」
余裕の笑みを向けられて
その表情が悔しいほどに格好良い。
なんだか焦らされているようで
紳士的なその仕草が、逆にすごく官能的で
まだキスもしていないのに体の中心が熱くなる。
「わかった。待っててね。」
キスしてほしい。
素直にそう思った。
目の前の唇に目を奪われながらも
それを隠すように背を向けて
バスルームへ向かった。