Last chance
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私が働いている店は
ありがたいことに、いつも繁盛していて忙しい。
それに加え、今日のディナータイムは
特別大食いの客でも来ているのか、いつも以上に調理に追われていた。
「お疲れ様でした。」
今日も一日頑張った。
従業員用の扉から店の外へ出て
夜空に向かって腕を上げ、ひとつ伸びをする。
と、後ろから声をかけられた。
「お疲れさん。」
サンジだった。
「サンジ…どうして……」
「ミドリの店が気になってな、さっきまで仲間と来てたんだ。うまかったよ。ご馳走様。」
「…どうりで忙しいと思った。」
「船長が大食いなんだ。悪かったな。」
サンジが笑った。
2年ぶりに見るその笑顔に胸が高鳴る。
「帰るんだろ。送ってく。こっちでいいのか?」
「え、でも…」
当たり前のように隣を歩き出すサンジに
少し戸惑う。
本当はこんなふうに慣れ合うべきじゃないのに……
「いつもこんな夜道をひとりで歩いてんのか。」
「割と治安のいい街だし、うちもすぐ近くだし、慣れればどうってことないよ。」
「あぶねェなァ。」
気に入らないのか、眉間にシワを寄せながら
タバコを噴かす。
この2年で変わったようで
その口ぶりも仕草もタバコの銘柄も
何も変わってはいなかった。
そこから数分で私の住むアパートに着いた。
「……また、会いに来ていいか。」
ドキっとした。
そんなこと聞くのはずるい。
また会いたいって言われているようで
勘違いしてしまいそうになる。
返事ができないでいると
サンジがグシャグシャと罰が悪そうに頭をかいた。
「悪い。もしかして今付き合ってるやつとかいるのか。」
「……そういうのは全然。あれから…ずっとひとり。」
あれ、なんかこんな言い方
未だにあなたを引きずってますって言っちゃってるみたい…?
恐る恐るサンジを見上げる。
彼は私を見つめていた。
視線と視線が交差して逸らすことができない。
冷たい夜風が2人の間をすり抜けた。
その瞬間、視界が真っ黒になる。
鼻いっぱいに、サンジのタバコの香りが広がる。
全身を包み込むような
力強く、それでいて優しいその抱き締め方。
やっぱり何も変わっていない。