Last chance
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「いいだろ?ミドリ。飯行くぐらいよ。」
「すみません。私、そういうのは。」
店の常連の男の人。
名前も知らないのに、しつこくデートに誘ってくる。
「また断ったの?なかなかかっこいい人なのに。もったいなーい。」
一部始終を見ていた同僚が
おちょくるように私に笑顔を向ける。
「ん、そうかな。」
私は持ち場に戻り
途中だった野菜の仕込みを再開した。
「ミドリって男が嫌いとか?」
「そういうわけじゃないけど…誰かと付き合うとかそういうのはいいかな。」
「どうして?あ、もしかして忘れられない人でもいるの?」
一瞬、手が止まる。
それを誤魔化すように、わざと大きな声を出した。
「もう!おしゃべりはいいから、仕事仕事!」
「はーい。」
図星をついておきながら
特にそれ以上詮索することもなく
同僚は持ち場へ戻っていった。
野菜の皮を剥きながら、思い浮かべる。
忘れられない人……
忘れられないどころか、全て覚えている。
彼の笑顔も、匂いも、仕草も、声も。
私に触れるときの
大事なものを触るような優しい手つきも。
その温もりも。
サンジの全てが
もう2年も経つのに、焼きついて離れない。
あの頃サンジは私の全てだった。
2年前。
フラれたと思っていた。
夢を叶えるために海へ出るなんて
私をフるための口実だと、ずっと思っていた。
でも違った。
サンジに別れを告げられて
しばらくしてから手配者が出回った。
変な絵だった。でも、間違いなく彼だった。
そこで初めて、口実なんかではなくて
本当に海へ出て海賊になったことを知った。
夢を叶えるために。
どうしても、嫌いになることができなかった。
最後の電話を思い出す。
——オールブルーでもなんでも…勝手に探しに行けば!さようなら!!
いくら傷付いたからって
なんて言葉を浴びせてしまったのだろう。
誰よりも大切な人だったのに。
何度も何度も後悔した。
可能なら、ちゃんと伝えたい。
私はあなたの夢を心から応援している、と。
会いたくて会いたくて、たまらない。
今も
彼の幸せを願わない日はない。