スキとキライと。【後編】
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皆に歓迎されて
晴れて私は麦わらの一味の仲間になった。
宴は夜遅くまで続いた。
ゾロとフランキー、ブルックはカウンターでまだお酒を飲んでいて
サンジはキッチンで洗い物、
他の皆はダイニングで寝てしまっていた。
私は自分が海賊になったことに、なんだか興奮していたのか、全く眠くなかった。
洗い物をしていたサンジが外へ行ったので
後を追う。
サンジは甲板の階段に腰掛けて
タバコに火をつけるところだった。
「ミドリちゃん。どうした?」
「ちゃんとお礼が言いたくて。」
隣に座る。
と、サンジは少し驚きながらも嬉しそうに笑った。
「お礼ならさっき言ってくれたろ?」
「違うの。今日のことじゃなくて。」
「ん……?」
サンジが優しい表情で顔を覗き込んでくる。
なんだろう。
隣に座ったのは初めてだからか
なんだかサンジの顔がすごく近い。
意識してしまって急に顔が熱くなる。
「初めて会った日……私をこの船に連れてきてくれてありがと。」
ちゃんと目を見てお礼を言いたかったのに
照れ臭くて逸らしてしまった。
「そのことか。放っておけなかっただけだよ。」
「あとその後も、一緒にいようって言ってくれてありがと。」
「それは…俺が君のそばにいたかったからな。」
「……それだけ言いたかったの。」
サンジは空に向かって煙を吐いた。
「それより、隣に来てくれたってことは、俺のこと、もうそんなに嫌じゃない?」
「……まぁ、うん。嫌じゃない。」
「嬉しいな。」
「……私、初めて会った時、この男は危険だ、って思った。」
「俺が?どうして?」
「今までずっと、男を避けて生きてきた。優しい言葉で近付こうとする男はたくさんいたけど、全部追い払ってきた。でも…サンジは振り切れそうになかったから。」
その時のことを思い出す。
今思えば、サンジは最初から優しくて
嘘ひとつなく、心から私の心配をしてくれているのが伝わってきてた。
こんな男もいるのか、と意外に思ったくらいだ。
「あんな風に男に助けられたのは初めてで、少しくすぐったい感じがして、思ったより嬉しくて……なにより…サンジが格好良かったから……」
サンジは私とは反対を向いてタバコを吸った。
照れているのか、耳が真っ赤になっている。
「いつも一番距離を置いていたのは、サンジのそばにいると胸がぎゅってなって苦しくなっちゃうから。」
「……それって…」
「……でもこの気持ちがなんなのかよくわからない。」
「ははは。じゃあ、俺から言うよ。」
サンジは笑うとタバコの火を消して
体ごと私の方を向く。
「好きだよ、ミドリちゃん。」
また、顔が熱くなる。
「もちろん仲間としてだけじゃなく、ひとりの女性としてだ。」
真っ直ぐに見つめられて
目を逸らせない。
「君の恋人になりたい。」
「恋人?」
「特別な相手ってことだ。」
そっと手を握られる。
大きくてゴツゴツと骨張った
男の人の手。
不思議と嫌じゃないのは
やっぱり相手がサンジだからだろう。
私にとって
サンジは“特別“。
「……私も好き。」
確かめるようにサンジの指に自分の指を絡める。
「一緒にいるとドキドキして、サンジのことばかり考えて……こうやって触りたいって思う。それって好きってことでしょう?」
「あぁ、そうだな。」
サンジが照れ臭そうに笑ったから
私も嬉しくて笑った。
「たまらないな、その笑顔。」
腰に手が回されて
ぎゅっと抱き締められる。
耳にサンジの息がかかる。
「好きだよ。」
吐息の混ざった声でもう一度言われて
体中が沸騰しそうなほど熱くなった。
私もサンジの背中に手を回して目を閉じた。
大好きな腕の中。
気持ちが安らいで、落ち着く場所。
男とは一生無縁の人生になると思っていた。
それがこんな男だらけの一味の仲間になって
好きな人までできて
これは、私の第2の人生のはじまり。
人を好きになることを教えてくれた人。
あの日、あの島でサンジに助けられたのは
きっと運命だったんだ。
…fin