スキとキライと。【前編】
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風呂に入った彼女が、ナミさんの服を着てダイニングへ戻ってくる。
そのままナミさんに促されて、テーブルに座った。
俺は2人にコーヒーを出した。
「私はナミ。で、このお姉さんがロビンよ。あんた名前は?」
「ミドリです。」
「ミドリね。よろしく。」
ナミさんが笑うと彼女もつられて笑顔になった。
ミドリちゃんていうのか。
名前も可愛いな。
俺には絶対教えてくれなかったのが少し寂しいが。
「サンジがあなたに嫌われたって言ってるんだけど、もしかして何かしてしまったのかしら?」
ロビンちゃんに聞かれると
ミドリちゃんは首を横に振った。
「私、男が大っ嫌いなの。助けてもらったけど…だからと言って気を許したくはないんです。」
ロビンちゃんの言う通りだった。
俺が特別に嫌われている、というわけではなかったので少し安心した。
男嫌いなら、あの態度は仕方ない。
“男が大っ嫌い“と言われて、
カウンターのウソップとブルックもなんだか肩身が狭くなったように黙りこくっている。
ロビンちゃんの膝の上に座るチョッパーも
なんとなく空気を読んで、静かにジュースを飲んでいた。
「見たところ海賊には見えないけど…船があるってことはミドリは旅をしているの?」
ナミさんが話を続ける。
「うん。ある海賊団を探してるの。仲間にしてもらうために。」
「海賊になりたいの?」
「そう。ずっと憧れてる人がいて…」
「船が直るまでこの船にいることになるだろうし、よかったらあなたのことを聞かせてくれない?もしかしたら何か力になれるかもしれないわ。」
ロビンちゃんが優しく言うと
ミドリちゃんはこくりと頷いた。
「聞かれたくなかったら俺たちは出てようか?」
「別に、聞かれても構わない。」
ミドリちゃんは静かに自分のことを話し始めた。
俺は夕食の仕込みをしながら
皆と一緒に話を聞いた。
「私は早くに母を病気で亡くしたの。まだ小さかったから、母の記憶はほとんどない。それからは父に育てられてきたけど、最低の男で、仕事もしないで毎日のように違う女を家に連れ込んでた。父は私のことが邪魔になったみたいで、ある日を境に家に帰ってこなくなった。」
「あんたが男嫌いになった原因って…」
「そう、父のせい。私は男の汚い部分をたくさん見てきた。気付けば男はみんな生理的に受け付けなくなってた。」
そんな理由があったのか…
最低野郎の子どもとして生まれちまっただけで、ミドリちゃんは傷付いてきたんだ。
同じ男として情けねェ。
「父に捨てられてから、もちろん家賃なんて払えなくて、住む家も無くした。しばらく路上生活をしている時に、たまたま島を訪れたある海賊団に出会って救われたの。それが九蛇海賊団。」
「九蛇!」
「海賊女帝ね。」
「そう。それが10年前、私が8歳のとき。すでにハンコックさんは七武海で、強くて有名な海賊だった。女性だけの一味なのに、他の男の海賊たちをものともしない強さに、私は憧れた。九蛇海賊団はしばらく私のいる島を拠点に航海していて、身寄りのない私に、女がひとりで生きていくための全てを教えてくれた。」
「まさか、あの海賊女帝と繋がりがあったなんて。」
「次会った時に私がさらに強い女戦士になっていたら、仲間に入れてくれるって、別れ際ハンコックさんに約束してもらったの。今でも覚えてくれているかわからないけど、私は仲間にしてもらうために海へ出た。」
ミドリちゃんの話を聞いてナミさんは納得したように頷いた。
「なるほどね。でもあんた本気でひとりでこの海を渡っていけると思ってるの?」
「わからない。でもその辺の男には負けない自信はある。ハンコックさんたちと別れた後も修行を積んで、覇気も習得した。」
「覇気!?」
「まー!こんな麗しいお嬢さんが!」
カウンターでウソップとブルックが声を上げるとミドリちゃんはそちらをギロっと睨む。
「すみません…」
「大きい声出してすみません…」
「九蛇の仲間に入れてもらうんだもん。覇気くらい使えなきゃ。」
「あんた見かけによらずすごいのね。」
「九蛇海賊団に入れてもらうということは、女ヶ島を目指しているのね?」
「…女ヶ島はカームベルトにあるから、さすがにそこまでは…とりあえず海へ出ればハンコックさん達に会えると思って。」
「すごい勇気があるんだな、ミドリは。」
「……さっきから気になってたんだけど、そのたぬき喋るの?」
「トナカイだ!!」