スキとキライと。【前編】
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スキとキライと。【前編】
〜side サンジ〜
雨風が強く吹き付ける嵐の中
俺たちを乗せたサウザンド・サニー号はある島に到着した。
その島は人が住んでいる気配もなければ、動物たちの姿もなく、草木も所々に生えている程度の荒地だった。
「降りても何もなさそうね。天気が落ち着くまで船でやりすごしましょ。」
ナミさんの言うことに一味の皆は同意したが、いつものようにこいつだけは言うことを聞かない。
「船にいるなんて暇じゃねェか!おれは行くぞ!サンジ、弁当!」
船長のルフィだ。
仕方なく俺は弁当の準備を始める。
冷蔵庫を開けて、ふと食材の残りが寂しいことに気付く。
「仕方ねェ、ルフィ俺も行く。」
「おう!行こう行こう!」
「サンジくんまで?」
「食材が切れそうなんだ。こんな島じゃあまり期待できないが、何か食べられそうな物がないか探してくるよ。」
こうして俺とルフィは
雨風吹き荒ぶ中、船を降りた。
「本当に何もねェ島だな。」
「あぁ。食えそうな獣もいねェ。まいったな。」
島の中心部まで来ると、二手に分かれて捜索を始めた。
ーーーーーー
「お、人がいるみたいだな……」
しばらく歩くと小屋を見つけた。
そこには明らかに人が生活している跡が伺える。
誰か人に会えるかもしれない。
警戒しながらも近付くと、小屋の裏側で誰かが争う声が聞こえた。
「嬢ちゃん、ここらは俺らが縄張りにしてんだよ。」
「だから船を修理する材木を探しにきただけだって言ってるでしょ!?こんな島すぐに出ていくわよ!」
「それにしてもいい女だな。俺らの仲間になりゃいい思いさせてやるぜ。」
「まぁいい思いするのは俺たちだがな。」
「女一人で生きていけるわけないんだからよ。俺たちと遊ぼうぜ。」
見ると10人を超える男どもが
ひとりの女の子を囲っていた。
俺より少し若そうな女の子だ。
レディーが俺の助けを待っている。
男達は、山賊のようだ。
その中の2人が彼女に近付き、両側から腕を掴むと同時に彼女が抱えていた材木が地面に落ちた。
「痛い!離してよ!殺すわよ!」
「強気なところも可愛いじゃねぇか。」
考えるより先に体が動き、俺はその輪の中に飛び込むと2人の男を蹴り上げる。
「女性に乱暴するなんて最低だな。このクソ野郎共。」
「なんだこの男!急にどっから現れた!?」
そのまま周りの男たちも次々に倒した。
「どいつもこいつも雑魚だな。レディーひとりに寄ってたかって、気に入らねェ。」
最後のひとりを倒すと、彼女は落ちた材木を拾い始めた。
「大丈夫だったか?怪我は?」
優しく声をかけたつもりだったが
明らかに不機嫌な顔で睨まれる。
「こんな奴ら、私一人でやれた。余計なことしないで。」
てっきりお礼を言ってもらえると思っていた俺は甘かった。
どうやら機嫌が悪いようだ。
彼女は材木を拾い終えると、海岸へ向かって歩き始めたので、なんとなく放っておくことができずに俺は後を追った。
見たところひとりのようだし、レインコートも着ていないからずぶ濡れだ。
「俺はサンジだ。君の名前を聞いてもいいか?」
「……見たことある顔だと思ったら、あんた麦わらの一味ね。」
「お、知っててくれたのか。嬉しいな。」
「助けていただいたことにはお礼を言います。でもあんたに名前を教える義理はありません。失礼します。」
「じゃあ名前は教えてくれなくていい。君はひとりなのか?」
「そうです。ついてこないで。」
「船の修理なんてできるの?」
「わからないけどやるしかないの。私はこんな島で立ち止まっていられないので。」
「あのさ、こんな天気だし、よかったら一度うちの船に来ないか?」
そう言うと、彼女は一度足を止めた。
「あんたの船に?」
眉間にシワを寄せて
明らかに疑いの目を向けてくる。
「あぁ。船に仲間もいるし、船大工もいる。君の船もきっと直してくれるぜ。」
少し考えている。
悪くない提案だと思うんだが、相当警戒心が強いみたいだ。
「言っておくけど、私強いわよ。きっとあんたよりも。だからもし嘘をついていたらボコボコにしてやるから。」
「俺は嘘はつかないよ。」
常に喧嘩腰の彼女がなんだかおかしくて
俺は笑顔がこぼれた。
相変わらず彼女は俺を睨んでいる。
着ていたレインコートを脱ぎ、彼女に掛け
重そうに抱えている材木に手を伸ばすと、素直に持たせてくれた。
「船に行けば女性もいるから安心しなよ。こっちだ。」
俺は嫌われているみたいだが
おとなしく俺についてくる彼女が
なんだか愛おしくなってきた。