片道の恋
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昼間の君との会話からずっと考えていた。
どうにか、ルフィへの気持ちを俺に向けさせることはできないのか。
君の心に俺が入る隙間を作れないのか。
考えているうちに、ある結論に達した。
俺の気持ちを伝えようと。
失恋したばかりの弱っている心に漬け込むようで少し気が引けるけど
少しでも俺のことも考えてもらえたら……
ーーーーーー
「サンジくん、お待たせ。」
夕食後。
波の音だけが響く静かな船尾に君を呼び出した。
「悪いね、急に。寒くないか?」
「大丈夫だよ。」
無邪気に笑う君に、これから俺の気持ちを伝えるんだ、と思うと胸が高鳴る。
女性に愛の告白、なんていつもの調子で言えばいいと思っていたが
柄にもなく緊張した。
言葉を切り出せず、無言でタバコの煙を吐く俺に、心配そうに寄り添ってくれる。
「サンジくん?何かあった?」
可愛くて
たまらなく愛おしくて
格好付けた言葉なんて選ぶ余裕がなくなった。
「俺じゃあダメかな…」
「………?」
不思議そうに首を傾げるミドリちゃん。
「俺じゃあ、ルフィの代わりにはなれねぇか?」
「えっと…それって……」
「好きだよ、ミドリちゃん。」
やっと意味を理解したミドリちゃんは
言葉を失って固まる。
「俺は君が好きだ。」
ダメ押しのようにもう一度言うと
顔を真っ赤にして焦り出す。
「ごめんっ、ちょっと…混乱しちゃって……」
「驚かせてごめんな。ずっと好きだった。ずっとミドリちゃんを見てた。だからルフィへの君の気持ちにもすぐに気付いたんだ。」
「サンジくん……」
「なぁ、俺じゃあルフィの代わりにはなれねぇのかな。」
真剣な俺の顔に、冗談ではないとわかってもらえたようで
ミドリちゃんも真剣な顔つきになる。
「あの……気持ちは嬉しいけど、私やっぱり……」
「ルフィがいいのか……」
無言で頷く。
思ってた通りの返事だ。
フラれることなんて目に見えてた。
「……ルフィを好きなままでもいい、と言ったら?」
「……え?」
そっと君の手を取る。
小さくて頼りなくて柔らかい。
「全て受け止める。ルフィを忘れられない君も。だから……そのままでいいから、俺のものになってほしいんだ……」
「そんな……」
困らせてるってわかってる。
みっともないのもわかってる。
それでも
どうしても君が欲しい。
「ごめんね、サンジくん……でも、そこまで想ってくれてありがとう。」
君は俺の手を両手で包んで
顔の前でギュッと握った。
暖かくて優しい感触に、涙が出そうになる。
「サンジくんの気持ちは本当に嬉しい。ルフィのことは…辛くなるときもあるけど、もう少し頑張りたいんだ。」
俺の手を離し、無理に作った君の笑顔は
月の明かりに照らされて
そのあまりの綺麗さに息を飲んだ。
「望みがないのはわかってるんだけどね。やっぱりあの人が好きなの。」
「……あいつは幸せな奴だな。」
「……私行くね。おやすみなさい、また明日。」
明るく手を振って、君はその場を離れた。
俺はしばらくタバコをふかしながら
月に照らされる水面を眺めていた。