あなたの手
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「すみません、寝ちゃって…」
「いいんだ。もう仕込みもほとんど終わったし。キュートな寝顔も見られたしな。」
もう一度髪を撫でてくれた。
「……好きです。」
まだ夢見ごごちな私は
ふと気持ちを言葉に出してしまっていた。
「え……」
サンジさんが一瞬固まったので
私も我に帰る。
「あ、あのっ……手!手が、です!サンジさんの手、好きです!いつも頭を撫でてくれますよね。」
焦って必死で誤魔化すと
サンジさんは困ったように笑う。
「あぁ、手?手な……ありがとう。初めて言われたよ。」
うまく誤魔化せたかな…
今更恥ずかしくなって
目が見られなくなってしまった。
「……好きだよ。」
俯く私を覗き込むように見て
サンジさんは笑った。
「……へ?」
「俺はミドリちゃんの髪が好きだ。サラサラしてて、触りたくなる。また撫でてもいいか?」
サンジさんの優しさに涙が出そうになる。
「いつでもどうぞ。」
頭をサンジさんの方へ向けると
クシャクシャと優しく撫でてくれた。
その大好きな手で。
「よし、寝るか。俺はここ片付けて行くから、ミドリちゃんはもう部屋へ行きな。」
「はい。」
肩にかけられていたブランケットを取り
立ち上がろうとしたら
カウンターの椅子が少し高めなことを忘れていて、足を踏み外しバランスを崩す。
「わっ…!」
「おっと。」
とっさに伸びてきたサンジさんの腕を掴んで
なんとか転ばずに済んだ。
「大丈夫か?」
「すみませんっ。ありがとうございます。」
体勢を整えて離れようとしたら
大きな力で抱き寄せられ
気付けばサンジさんの腕の中。
「あの…サンジさん?もう離して大丈夫ですよ?」
「……あんまり可愛い顔で見ないでくれ。俺、今戦ってるから。」
「え…何がですか?」
「本能と理性が。」
「えっと…あの……」
どうしたらいいのかわからないけど
この状況は恥ずかしくて、でもとても嬉しくて
そのままサンジさんに身を預けることにした。
いつもは微かに感じる程度の彼のタバコの香りに全身を包まれて
ドキドキしすぎて息も苦しくなる。
「……悪かったなミドリちゃん。おやすみ。」
サンジはミドリをそっと離すと
最後にもう一度頭を撫で、笑顔を向けた。
どうやら、なんとか理性が勝ったらしい。
「おやすみなさい。」
ミドリも笑顔で応えて、キッチンを後にした。
お互いの想いを伝え合って
2人の仲が進展するのは
もう少し先のお話。
…fin