初恋
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雪洞の両端に背を預け向かい合って座り
ミドリちゃんのリュックに入っていた
海賊弁当を分けて食べ終えると
すぐに手持ち無沙汰になった。
入口を塞ぐシートの向こうから微かにゴーゴーと
吹雪の音が聞こえてくるだけの静かな空間に
”2人きり”を意識して、妙に緊張した。
「横になった方がいい。疲れたろ。」
彼女の体力が本気で心配だったからそう言ったが
できるだけ早く眠ってくれ、という意味も
含めていた。
「うん、そうだね。サンジは?」
「おれは一服してから。」
取り出したタバコを見せながら笑顔を向ける。
「じゃあ先に休ませてもらうね。今日は本当にありがとう、サンジ。あの…おやすみなさい。」
「あァ、おやすみ。」
ミドリちゃんはおれに背を向ける形で
横になり、おれは静かにタバコに火をつけた。
静寂の中に、外からの風の音と
煙を吐く吐息が妙に響く。
しばらくして、ミドリちゃんの背が
規則正しく微かに上下しているのを見て
眠ったことを確認し、ホッとした。
ウソップが用意してくれていた
1枚のブランケットを彼女の体に掛けて
タバコの火を消した。
——ガクッ
「っ!」
体が倒れそうになってふと気がついた。
どうやら壁にもたれて座ったまま
居眠りしちまったみたいだ。
ミドリちゃんを見ると、寝ついたときのまま
静かに寝息を立てていた。
こんだけよく寝てりゃ大丈夫か。
明日のことを考えて
おれも隣に横にならせてもらうことにした。
できるだけ間隔を空けたつもりだが
少しでも動けば肩が振れそうなほどではあった。
横で寝てるのはマリモ。
横で寝てるのはマリモ。
頭の中で何度もそう唱えながら目を閉じる。
幸い体は疲れていたようで
すぐに眠気が襲ってきた。
よかった。これなら眠れそうだ。
そう安心したときだった。
隣で動く気配がして、全身に力が入る。
薄く目を開けて横を見ると
寝返りを打ってこちらを向いたミドリちゃんの
ぱっちりと開かれている可愛い瞳と目が合った。
「なっ……」
思わず体を引いたが、すぐ後ろはもう雪の壁で
これ以上距離を取れない。
「ごめんな。起こしちまったか?」
「ううん。ずっと起きてた。」
驚きの一言に言葉を失うおれをよそに
ミドリちゃんは、自分にかかっていた
ブランケットを半分おれにかけてくれた。
まずい。
向き合ってこんなにも
密着している今のこの状況は、マジでまずい。
「悪い。おれは——」
「サンジごめん。やっぱりフランキーとの方が良かった……」
座って寝るよ、と言いかけて
ミドリちゃんに言葉を遮られた。
同時に
おれよりもフランキーが好きだと言われたようで
大きなショックを受け、また言葉を失う。
「あ、違う。えっと、そうじゃなくて…」
ミドリちゃんも自分の言葉に戸惑って
頭を整理しているようだったので
静かに続きを待った。
「すごく眠かったし、どうにか寝ようと思ったんだけど…サンジとじゃ……眠れそうにないの。」
言いながらどんどん首を曲げていって
最後は表情が見えなくなるほどに
下を向いてしまった。
言われたことの意味がわかって
おれはカッと顔が熱くなる。
「困ったよ……ずっと、ドキドキしてるの。」
「………っ…」
思わず、勢いのままに抱き締めた。