初恋
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「ごめんね?サンジ。私のせいで……」
「いや、元はと言えばルフィのせいだろ。こんな天気の中、何が冒険だってんだ。」
———それはたどり着いた冬島の雪山での出来事。
「冒険に行くぞ!」
「雪!懐かしいな!おれも行くぞ!」
「何バカ言ってるのよ!この雪の量見て。すぐに吹雪になるわ。明日の朝までは船で待機!」
ナミさんの止める声を聞きもせず
目を輝かせたルフィとチョッパーは
「すぐ戻るからよ!」と準備万端に船を降り
仕方なく残ったクルーでお供くじを引き
おれとウソップ、そしてミドリちゃんが
当たりを引き当てた。
「本当に雪ばっかりでなァんにもねェな〜!」
「おいおいおい。どこまで登るんだよ〜。」
「この雪の感触、たまらねェ!懐かし!」
ルフィを筆頭に各々思ったことを口にしながら
何もない雪山を何を目指すわけでもなく
ただひたすらに登っていく。
「お前ら、ミドリちゃんもいるんだ。ペース考えろよ。」
「大丈夫だよ。ありがとう、サンジ。」
「疲れたらおれがいつでもおんぶしてあげるからね。」
「…ははは……」
笑顔を向けると、ミドリちゃんは
おれからの本気の愛情表現に対して
いつもそうするように、困った顔をして笑った。
真っ白な雪を背景に見る彼女は
いつも以上に輝いて見えて、胸が高鳴った。
少しすると、ナミさんの言った通り風が出てきて
雪の量も徐々に増えてくる。
「おい!そろそろ——」
「うお!向こうで何か動いたぞ!」
船に戻るよう言おうとした瞬間
何かに気付いたルフィがその方向目掛けて
一目散に走り出した。
「やめとけルフィ!この雪の中にいるとしたら雪男かもしれねェ!!」
「おれ雪男怖くないぞ!!」
それを追いかけてウソップとチョッパーも
早足になる。
「おい!待てってお前ら!!」
「うわっ——」
「おっと!」
おれがヤツらを追いかけようとするすぐ横で
ミドリちゃんが視界から消える。
足を滑らせた拍子に転んでしまったようで
とっさにその手を取るも、支えきれずに
そのまま2人で滑落してしまった。
なんとかミドリちゃんだけは守るべく
咄嗟に腕を引いて抱き寄せ
ある程度滑り落ちたところで背中に衝撃が走り
体が止まった。
おれの腕の中にすっぽりとおさまってる
ミドリちゃんを確認してホッと胸を撫で下ろす。
「大丈夫か?」
「私は大丈夫!サンジこそ、怪我してない!?」
名残惜しく思いながらも体を離すと
おれの服に付いた雪を払いながら
泣きそうな顔になるミドリちゃんに
笑顔を向けて、上を見上げた。
「なんともねェよ。おォおォ、随分滑ったな!」
「ごめん…私が転んだりしたから。」
「サニーに帰ろう。これじゃ追いつきようがねェし、あいつらもそのうち戻ってくるだろ。」
「うん……」
立ち上がって手を差し出すも
ミドリちゃんはなかなかその手を取ろうとしない。
その様子に、嫌な予感がした。
「怪我でもしたか?」
「……ごめんなさい…足が痛くて……」
転んだ拍子に捻っちまったのか、顔を歪めて
右の足首をスノーブーツの上から撫でた。
自分の不甲斐なさに腹が立つ。
おれがついていながら、怪我させちまった。
「まさか本当におんぶすることになるとはな。ラッキーだ。」
背負っていたリュックを身体の前で付け直し
ミドリちゃんに背を向けて膝をついた。
「えっ……」
「不謹慎だったな。ごめん。でも冗談抜きに乗ってくれ。ここにいるわけにもいかねェし、歩かせるわけにもいかないよ。」
「………」
ミドリちゃんは黙り込んだ。
背を向けていて確認できないが
困った表情で固まってる彼女の姿が目に浮かぶ。
さすがにおんぶされるのは恥ずかしいか…
何か他に手は……と、考えていると
ぎゅと、首に手が回されて、背中に重みを感じた。
重みっつってもすげェ軽いし
なんてことない重さだが
「よろしくお願いします……」
耳元で恥ずかしそうにそう囁いてくるから
全身が一気に高揚した。