煙草とジャスミン
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「ミドリちゃん!」
「おれの腕の中に!さァ早く!!」
無視されてもいい。
嫌がられてもいい。
おれが君を守りたいって、その気持ちを
少しでも知ってもらえたらいい。
まァ本当に来てくれたら、万々歳なんだが。
そういう思いで、いつも腕を広げていた。
ギュッ——
「ミドリ、ちゃん…?」
だから君が言われた通りに
腕の中に飛び込んできたときは
心臓が止まるかと思った。
「サンジ君が来いって言ったんじゃん。」
顔は見えなかったけど、強気な発言とは裏腹に
背中の手は少し震えてるし
耳とうなじが真っ赤になっていて
どうしようもなく、愛おしさを感じる。
大きく船が揺れて、咄嗟に抱き締めると
ほのかにいい香りがした。
ある日。
朝起きて、シャツに袖を通すと
微かにいつもと違う香りがした。
洗剤でも新しくしたのか?と
最初はあまり気にしていなかった。
でもそれは毎日のように続いて
しかもズボンや他の服からはその香りはしなくて
不思議だった。
「ミドリちゃん、何か飲むか?」
ダイニングで本を読んでいる
ミドリちゃんに声をかける。
「ありがとう。いつものお願いします。」
「あァ。待ってて。」
いつもの。
ミドリちゃんが好きなジャスミン茶。
島に着く度に必ず買い足して
切らさないようにしている。
その容器を開けて、茶葉をポットに移していると
ふと、手が止まった。
この香り……
ドクドク、と鼓動が速くなる。
「あれ?ミドリちゃんは?」
レディ達へのおやつを手に甲板に出ると
ミドリちゃんの姿がなかった。
「洗濯物、取り込んでくれてるわ。最近毎日あの子がやってくれてるのよ。」
「そうか。洗濯物……ちょっと行ってくる。」
甲板のテーブルにおやつを置いて
彼女の元へ向かった。
ミドリちゃん。
洗濯物。
ジャスミンの香り。
全てが繋がるような気がして。
「………」
それを見て、足が止まった。
全部、はっきりした。
ミドリちゃんがおれのシャツに
抱き着いている。
間違いなく、おれのだ。
袖を自分の肩にまで掛けて…
君はなんてことを……
可愛すぎだ!!
思いもよらなかった彼女の行動に悶えていると
おれの足音に気付いたのか
ミドリちゃんがこちらに振り返る。
目と目が合って
見る見る顔が真っ赤になっていって
抑えきれないほどの愛おしさが溢れた。
逃げる彼女を追いかけた。
あの日、腕の中に収めてから
おれはミドリちゃんばかり意識するようになって
本気の恋に落ちていた。
ずっとおれのものにしたかった。
やっと……君が手に入る。
…fin