煙草とジャスミン
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「ミドリちゃん!」
「来ないで!!」
ここは船の上。
逃げ場なんてないことはわかってる。
逃げたって意味ないこともわかってる。
でも逃げるしかない。
もう、サンジ君の顔を見られない。
穴があったら入りたい、とはこのことだ。
「逃げねェでくれって。」
サンジ君は足が速いんだった。
すぐに追いつかれ、腕を掴まれた。
「見ないで!!」
思いっきり顔を逸らす。
こんな変態な私なんて見られたくない。
手遅れなのはわかってるけど
とにかく見られたくない。
「あっち行って!!」
おまけに何も悪くないサンジ君を罵る最低ぶり。
もう消えてなくなりたい。
「落ち着けって。ミドリちゃん。」
これが落ち着ける状況なものか、と思ったけど
もうこうなったら逃げ切れるわけもない。
私は仕方なく抵抗をやめた。
「……気持ち悪いことして…ごめんなさい……」
素直に頭を下げた。
涙が出そうだった。
でも仕方ない。
嫌われるようなことをしてきた、自分が悪い。
「気持ち悪くなんかねェよ。」
ふわりと全身を包まれる。
「ただのシャツなんかより、こっちの方がいいだろ。」
「えっ……」
サンジ君に抱き締められていた。
「…怒ってないの……?」
「あんな可愛いことされて、怒るわけないって。」
頭を優しく胸に抱き寄せられた。
私もサンジくんの背中に手を回してシャツを掴む。
タバコの香りが鼻の奥を刺激する。
あぁ、サンジ君の香りだ。本物の。
ずっと私が求めていたものだ。
「……ずっと不思議だったんだ…」
「……え?」
「最近、洗濯に出したシャツが返ってくると、ほのかに甘い香りがしてて。」
「甘い…?」
「洗剤変えたのか?とか、最初は思ってたんだが、他の服からはしないんだよ。いつもシャツだけ。」
「………」
「しかもその香り、おれの知ってる香りだった。」
そこまで言われて、ハッとして
恥ずかしすぎて顔が熱くなる。
「いつもミドリちゃんに淹れてる、ジャスミンの香りだ。」
私がいつもサンジくんのシャツに
匂いを残してしまっていた……?
「ごめんなさい……」
サンジくんを見上げると嬉しそうにニッと笑う。
「すげェ嬉しいよ。」
大きな手で、両頬を包まれて
顔が近付き、額と額が重なる。
「おれのこと、好きなの?」
この状況で、それを聞くのはずるい…
もう白状するしかないじゃない。
「うん…すき……」
「おれもミドリちゃんが好き。」
唇が優しく重なった。
初めてのキスは
大好きな彼のタバコの香り。