煙草とジャスミン
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こうやって気にして見ていると
サンジ君はこの船の男たちの中で
一番服装に気を遣っていることがわかる。
シャツは何枚も持っているようで
それらをちゃんと着回し
昨日と同じシャツ、なんてことは絶対にない。
私はすっかりサンジ君のシャツを
チェックするのが日課になっていた。
そして、もうひとつ
日課になってしまったことがある。
「ミドリ、あんたまた洗濯してるの?」
「あ、うん。天気いいし。」
「まぁ私たちは助かるけど、たまにはサボってもいいのよ。」
「いいのいいの。洗濯好きだから。」
それは洗濯を干すこと……ではなくて
干した洗濯物を取り込むときの行動。
「………」
そう、サンジ君のシャツをギュッと抱いて
顔を押し付けること。
すっかりクセになってしまった。
自分が変態女だってことはちゃんとわかってる。
でも、相変わらず彼は
私の気持ちには全く気付いてない様子だし
報われない恋をしている可哀想な私…
変態でも、少しくらいいいじゃないか、と
すっかり割り切っていた。
さらに最近は、この行為も少し
エスカレートしてきた。
少し前に、気が付いた。
取り込む前、ハンガーに干したままのシャツは
私の目線より少し上。
サンジ君が立っているのと
同じくらいの高さにあることに。
なんだかサンジくんが目の前にいるような
そんな感覚になって、急に鼓動が速くなってくる。
できることなら、もう一度抱き締められたい。
ずっとそう思っていた。
シャツと向かい合い
左右の袖の部分を手に取って
それぞれ自分の左右の肩に乗せてみた。
そして背中側をきゅっと握る。
正面と正面でシャツと密着して
目の前には胸元のボタンがあって
まるであの時のように
サンジくんに抱き締められているような
そんな感覚に全身が高揚する。
そのドキドキが心地よくて
その日から、やめられなくなった。
これで最後、今日が最後、と思いながら
今も、同じようにしてシャツを抱き締めている。
ふわりとシャツが風に揺れて私の顔を撫でたので
そっと目を閉じた。
本物と、いつかこうできますように。
こっそりお願い事もしてみた。
——タッ
「!!」
後ろから誰かの足音が聞こえ、慌てて振り返る。
肩にかけられていた袖の部分が
ハラリと肩から落ちた。
「サンジ君……」
頭が真っ白になる。
見られてた……
「あ、いや、その……手伝おうと思って来たんだが……」
サンジ君も戸惑っていた。
「……それ、おれのシャツだよな…」
指摘されて
シャツをしっかり掴んだままだった両手を
パッと離す。
見られてしまった!
私の変態行為を!
まさかの本人に!!
勢い任せに、その場から逃げ出した。