肌を重ねたなら ver.s
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「……っ………」
「……ミドリちゃんっ!?」
私の様子に気付いたサンジが慌てて離れ
そこで私は初めて
自分が泣いていることに気付いた。
「……あれ…」
「やっぱり……嫌だったか?」
涙で視界が歪んでよく見えないけど
声質から、サンジがとても心配してるのがわかる。
「違うの、違う。っ…嫌じゃない。」
「何が違うんだ。こんな涙まで流して。」
サンジの熱い指が頬を伝う涙を拭ってくれる。
そうやって、優しくされればされるほど
涙腺が壊れたように涙は止まらなくて
「ごめんなさい。」
やっぱり、このままではダメだと気が付いた。
「……もう、サンジとはしない。」
きっと、もっとうまい伝え方があっただろうけど
言葉選びをする余裕もなく
私はそれだけ言い残してキッチンを後にした。
振り返ることはできなかった。
サンジも追いかけてこなかった。
サンジとの関係が終わった瞬間だった。
ひとりになりたくて、見張り台へ登った。
暖かい風が涙で濡れた頬を撫でる。
下からは、まだプールで騒いでいる
仲間たちの声が聞こえていた。
全て、終わってしまった。
あのタバコの匂いに包まれることも
優しい指先に触れられることも
熱のこもった瞳で見つめられることも
全部なくなってしまった。
身体だけの関係と割り切ったつもりが
沼にはまるように、サンジに溺れていった。
気持ちはどんどん大きくなってしまった。
真正面からちゃんと告白していれば
フラれたとしても、ここまで悩むことは
きっとなかった。
私がやり方を間違えたせいで
サンジを振り回りして、傷付けた。
そう、ちゃんと
先に気持ちを伝えていたら……
あなたが大好きって伝えたら
サンジはどう思うだろう。
もう、今更遅いかな。
壊れてしまった2人の関係は
違う形になったりはしないだろうか……
ーーーーーーーー
「いたいた!おーい!ここにいたぞ!!」
頭の上でチョッパーの声がして目を開ける。
下からは「なんだ」「居眠りでもしてたか」と
クルーたちが口々にしているのが聞こえて
きっと自分を探してくれていたんだと気付く。
少しひとりになるつもりが
眠ってしまっていたようで
気付けば辺りは夕陽に照らされていた。
「メシの時間だぞ!」
「ごめんね。ありがとうチョッパー。」
泣いたせいか、寝起きのせいか
頭が重くぼんやりとしていて
すっきりとしないままチョッパーに続いて
下に降りると
そこにサンジが立っていた。
「あー腹減った!」
「おう、さっさと食え。」
テテテテと可愛い足音を立てながら
ダイニングへ向かうチョッパーを見送ると
その視線は私に向けられた。
「ミドリちゃん。やっぱり、今夜待ってる。」
仲間たちに聞こえないよう
囁くような小さな声だった。
「えっ…でも——」
「わかってる。でも待っていたいんだ。本当に終わりにしたいなら来なくていいから……困らせること言ってごめんな。」
ポンポンと2回私の髪を撫でて
サンジはダイニングへと消えていった。