「待ってる」
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ゾロの優しい言葉に
この人を好きになってよかったと、心から思った。
まだ恋人になったばかり。
これから私たちのペースで少しずつ
先へ進んでいけたらいい。
そう思っていたのだけど
あれからゾロは、私がシャワーを浴びている間に
先に寝てしまうようになった。
昼間は一緒に過ごしても
キスもなく、私に触れてくることもない。
ぐっすり眠るゾロの隣で
起こさないよう静かにベッドに入る毎夜。
ゾロは待ってくれてるんだ。
私が大丈夫になることを。
きっとそれまで
彼から触れてくることはないんだろう。
どこか寂しいと思ってしまうのは
私のわがまま。
それでも、ゾロを求めてしまう。
髪を撫でてくれる掌が
抱き締めてくれる腕が
優しい口付けが
全てが恋しい。
全てを受け入れる覚悟がないくせに
その温もりが欲しくて欲しくて
眠る背中に手を伸ばそうとして
すぐに引っ込めた。
片思いから両思いになれて
今はこんなに近くにいるのに
また片思いに戻ったように遠く感じる。
ーーーーーーー
この島に滞在して6日目。
明日には出航することが決まり
この日は必要なものの買い出しを言い渡された。
私は食材の買い出し担当になり
サンジくんと分担し、頼まれたものを探しながら
街中をうろつく。
明日からまた船の上か。
この陸の感触、しっかり踏み締めておこう。
ゾロと寝られるのも、今夜で終わりだな……
センチメンタルな気分になりながら
歩いている時だった。
「お兄さんカッコいいですね〜!」
「旅の人ですか?」
複数の女の人の黄色い声が聞こえ
そちらの方を向くと
「あ?」
女性たちに囲まれているのは
間違いなく私の恋人だった。
「私たちと遊んでいきましょ?」
「いい身体してる〜!」
「離れろ、暑苦しい。」
谷間を覗かせたセクシーな服装の
綺麗な女の人たちが
ゾロの腕を取り、完全に誘っている。
ゾロは鬱陶しそうに
嫌そうな顔はしているが、振り払うこともせず
窮屈そうに歩みをを進めていた。
やめて。その人に触らないで。
私の彼なのに。
なんとも言えない怒りが湧き上がる。
でも恋人らしいことはさせていないじゃないか、
私に文句を言う権利はないんじゃないか、と
自問自答して焦燥感に襲われ
私は目を背けて
その場から逃げることしかできなかった。
あんな綺麗な人たち、この私に勝ち目はない。
ゾロも、あんなふうに囲まれて
まんざらじゃないと思ってたらどうしよう。
今ごろ一緒にいたりして……
まさかあのままホテルとか……
嫌な方、嫌な方へと考えてしまう思考が止まらず
済ませた買い物をサニーに届けて
お礼を言ってくれるサンジくんへの
返事もそこそこに、私は足早にホテルへと帰る。
その頃にはもうすっかり夜になっていて
ゾロも先に部屋に戻っていた。
「買い出し終わったのか。」
「あ、うん。ただいま。」
床に座って刀の手入れをするゾロの前に向かい
勢いよく正面に座る。
小走りで帰ってきたせいか
少し息が上がっている私を見て
ゾロは少し驚いて「どうした。」と顔を上げた。
ここに来るまでの間に、覚悟は決めた。
女の人に囲まれたゾロを見て、彼女でありながら
ものすごく焦ってしまった自分は
最高に格好悪かった。
あんな思い、もうしたくない。
今夜絶対に、ゾロとひとつになる。
「ゾロ。」
「おう。」
「私、今からシャワー浴びてくるから。」
「あ、あァ。好きにしろ。」
なんだそんなことか、という表情で
ゾロは視線を刀へと戻す。
「待ってて欲しいの。」
私がそう言うと、動きを止めて
またすぐに私を見た。
「今夜は……寝ないで待ってて欲しい。」
恥ずかしすぎて顔が熱いけど
真っ直ぐに視線を向けてそう言うと
ゾロは眉間に皺を寄せた。
「……意味わかってんだな?」
大丈夫。ちゃんとわかってる。
本当は少し怖いけど、もう逃げたりしない。
そういう気持ちで頷くと
伸びてきた手に優しく髪を撫でられた。
「わかった。待ってる。」