「待ってる」
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そのまま2人と買い物と夕食を済ませ
夜、ホテルに帰る。
またドキドキタイムの始まりだ。
恋人と2人きりで過ごせる喜びと
何か起こるかもしれないという
緊張との狭間に立たされながら、ドアを開けた。
が、そこにまだゾロの姿はなかった。
ゾロも街へ行ってるのかも。
先にシャワーを浴びて
適当に時間を潰しながら彼の帰りを待つ。
1時間、2時間と時間だけが過ぎ
気付けば日付けが変わろうとしていた。
時間が経つにつれ、不安になる。
もしかしたら私と同室なのが嫌で
帰ってこないのかも……
酒に酔って風呂場で倒れてしまう彼女なんて
確かに面倒臭いだろうし。
フラれてしまったらどうしよう……
このまま起きて待っていても
どんどんとマイナスな方向へ考えてしまうので
先に寝てしまおうかと、ベッドに入る。
と、同時にガチャっとドアが開く音がする。
帰ってきた!
出迎えにいくと、そこにはなぜか全身泥だらけで
所々葉っぱを付けた姿のゾロが立っていた。
「ど、どうしたの!?」
思いもよらない姿に思わず声をあげると
「少し迷った。」
罰が悪そうに口を尖らせたゾロがそう言った。
絶対少しじゃない!
だってその汚れ方
ジャングルにでも行っていたような有り様!
こんな都会な島にジャングルなんてあったの!?
色々と突っ込みたいところはあったけど
ちゃんと帰ってきてくれたことが嬉しくて
そして少し見栄を張るゾロが愛おしくて
私は笑顔を作った。
「おかえりなさい。」
「おう。シャワー浴びてくる。」
さすがにこれだけ汚れれば
ゾロも洗い流したくなるのか、と変に納得し
浴室へ見送る。
シャワー音が部屋に響く中
私はベッドに腰掛け、緊張していた。
昨夜は私が大失態をおかしてしまったから
何もなかったけど、今夜こそはもしかしたら…
もしも、そういう雰囲気になったら
私は受け入れられるだろうか…
でもゾロも迷子になって疲れてる様子だったし
すぐに寝てしまうかも…
だったら私も先に寝ておいた方がいいのかな…
「寝ねェのか?」
悶々としているうちに
ゾロはあっという間に浴室から出てくる。
その姿を見てギョッとした。
ゾロが上半身裸で
肩からタオルをかけているだけだったから。
そのタオルで髪を乱暴に拭きながら
平然と私の隣に腰掛ける。
その姿は船の上で何度も目にしてきたはずなのに
密室に2人きりという状況によって
私の心臓は爆発寸前だ。
「ま、待ってようと思って…」
とりあえずゾロの問いに何か答えなければ、と
そう返事をすると、ゾロが動きを止めて
横目で私を見る。
「おれを?」
他に誰かいる?と内心思いながらも
うまく答えられず、頷いて見せると
ゾロの表情が変わった。
「目、閉じろ。」
あ、あの時と一緒。
2人きりの船の上でのファーストキス。
だからわかった。キスが来るって。
そっと目を閉じると
思ったとおり柔らかいものが唇に触れ
すぐに離れた。
目を開けると、まだゾロの顔が目の前にあって
またすぐに唇が重なる。
慌てて目を閉じた、3回目のキス。
離れては、また重なって、4回、5回と
次第に数えてる暇も、息をつく間も無く
時にはチュと音を立てて
何度も何度も触れ合う。
恥ずかしくて、ただ受けることしかできず
心臓はさらにうるさくなる。
キスを受けることに必死になっていると
ゾロの手が肩に置かれて
そのままゆっくりとベッドに倒された。
その拍子に目を開けると
上から私を見下ろすゾロと目が合った。
ゴクリ、とゾロの喉が動いて
近付いてくる顔に思わずギュッと目を閉じる。
頬に、顎に、首筋に
唇を這わすようなキスが次々と落ちてきて
恥ずかしさで、顔が今までにないくらい熱くなる。
ゾロの手が私の服の中にするりと入ってきて
私の頭は急に冷静になった。
まさかこの流れって…このまま……
思わずゾロの腕を掴む。
「ま、待って、ゾロ。」
返事の代わりに手を止めて、ゾロがこちらを見る。
その目は少し熱を帯びていて
見たことのない表情にドキッとした。
「あの、私まだ……」
なんて言えばいいんだろう。
言葉がうまく出てこない。
したくないわけじゃない。
でも経験が全くなくて
うまくできる自信もないし、正直少し怖い。
そう、まだ覚悟ができてない。
でも、そう言ったら幻滅されてしまう気がして
うまく伝えられない。
「変なことして悪かったな。」
言葉が見つからないでいると
ゾロは何かを察したように体を離し
ベッドの反対側へ仰向けに寝転がった。
「ごめん、ゾロ…あの…嫌とかじゃなくて……」
「わかってるよ。んな顔すんな。」
そっと手を伸ばし、髪を撫でてくれた。
「お前が平気になるまで待ってるから、心配すんな。」
”待ってる”
そう言ってくれたゾロの瞳が優しくて
私は安心して笑顔を返した。