ただの仲間のフリはもうしねェ
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「まだ帰ってない!?」
「昨日の不寝番は?」
「おれだよ。」
チョッパーが手を挙げた。
「待ってたんだけど、戻ってこなかったんだ。」
「この島は安全だし、海軍がいる様子もなかった。」
「完全にただの迷子ね。」
「朝メシ食ったら手分けして街へ行こう!」
「そうですね。きっと見つかりますよ。」
「あの迷子野郎め。世話が焼ける。」
「おれが行けば匂いで見つかると思うんだけど。」
「大丈夫よ。チョッパーは寝てないんだから、ゆっくりしてて。」
不寝番だったチョッパーと
船番のサンジくんを残して、皆で島へ降りた。
昨日聞いたとおり
街にはシルバーの加工場があったり
アクセサリーのお店が軒を連ねていたりと
賑わいを見せていた。
「あいつのことだから大丈夫。そのうち見つかるわよ。」
「もしかしたら、そろそろルフィやウソップ達と合流してるかもしれないわね。」
ナミやロビンがそう言うので
一緒にショッピングやランチを楽しんでいたけど
私の心はやっぱりどこか落ち着かなくて
「ごめん、先に戻ってて。」
「え?」
「ちょっとミドリ!?」
2人にそう告げ、走り出していた。
と、いってもチョッパーじゃあるまいし
そんなにすぐには見つけられなくて
走り続けることにも限界が来る。
それに、今さら私が見つけられるなら
ロビンの言う通り、すでにルフィ達が見つけてる。
それでも、探すことをやめられず
ひたすら歩いていると、いつの間にか街を抜け
サニー号を泊めた港とは反対側の海へ出た。
まさかこんな遠くにいるわけ…
でもゾロのことだから有り得なくもない。
目的地とは反対方向へ行くのが得意な人だから。
いつも仲間達とはぐれてしまうゾロの姿を
ふと思い出して、自然と笑顔になる。
昨日、あんなことがあったから
顔を合わせるのは少し気まずいけど
一日も会えないでいるとすごく寂しい。
やっぱり私は、あの男が好きだから。
会いたい。
今はすごく、ゾロに会いたい。
陽が傾きはじめた。
と、海岸の岩陰に人の影を見つけた。
近付くと次第に
その影は、形が明確になっていって
「……ゾロ?ゾロ!!」
あろうことか
ゾロは岩に背を預けて居眠りしていたようで
私の声に目を開け、こちらを見る。
「……ミドリか。」
必死な私とは正反対に
ゾロは何事もなかったかのように
いつも通りの態度だった。
「よかった。帰ってこないから心配してたんだよ。」
「港がわかんなくってよ、朝にはちゃんと海に戻ったんだが、船がねェんだ。どこ行った。」
「サニー号は西の海岸!ここは東の海岸でしょ。」
「おう、そうだったのか。」
言いながらゾロは立ち上がり
パンパンと服の裾を手で叩いて砂を払う。
——おれのもんになれ。
低く響いた昨日の言葉が頭を過ぎった。
その言葉も、あのキスも
昨日、確かにあったもので
思い出して今さら顔が熱くなり
真っ直ぐにゾロの目を見られなくなる。
「皆も心配してる。一緒に帰ろう。」
そう言って、帰路の方を向き、ゾロに背を向けた。
「待てよ。」
足を踏み出そうとしたところで
手首を掴まれ、止められる。