ただの仲間のフリはもうしねェ
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ゾロのことが好きだった。
いつの頃からだろう。
仲間に迎えられたときから
ずっと彼だけは特別だった。
話しやすく、壁のない他のクルー達に比べて
ゾロだけが近寄りがたく、どこか遠い存在。
だけどその分
皆のように話せるようになると嬉しくて
笑ってくれると心が舞い上がった。
次第にその姿が視界に入るだけで
鼓動が速くなるのを感じ、恋が始まっていた。
そばにいられるだけで幸せ。
それが今、なんとなくだけど
ゾロからの好意を感じて
同時に戸惑っている。
特別な関係になるつもりはない。
今のまま、仲間のままの2人がいい。
恋人、だなんて複雑な関係になってしまったら
その先が怖い。
今のままが心地いい。
みんながいて、ゾロがいる。
それだけで幸せ。
特別なんて、私はいらない。
最近のゾロの変化が
私への好意からくるものなのなら
私はそれには気付かないほうがいい。
今のままがいいんだ。
他のクルー達が島へ降りた船内。
ダイニングで、ゾロは刀の手入れをし
私は本を読んでいた。
グゥゥゥゥ——
気の抜けた音が響いた。
ゾロのお腹の虫だ。
時間はちょうどお昼どき。
「腹減ったな。」
「サンジくん買い出しに行っちゃったし、私何か作るね。」
2人きりで間がもたなくなった私は
腕を捲り、エプロンを着けながらキッチンに立つ。
「おォ。頼む。」
と、ゾロは刀を置いて立ち上がり
向かいのカウンターに腰掛けると
肘をついてこちらを見ていた。
食材を出しながら
なんとなくその視線が気になり
「あの、出来たら呼ぶから。」
そう言ったけど、ゾロは一向に動こうとしない。
「いいだろ、ここで見てたって。」
「そんなに見られてたら、やりにくいんだってば。」
「お前が料理するとこ、見たことねェしよ。」
そう言って、イタズラに笑う。
「いつもサンジくんの隣で手伝ってるけど?」
サンジくんの名前を出した瞬間
あからさまに笑顔が消え、眉間に皺ができる。
「あのクソコックと一緒にいるとこなんか、見たくもねェし興味もねェ。」
思わせぶりなセリフにドキっとする。
真っ直ぐに睨むように見つめてくるその目線は
他にも何か言いたげで
私は思わず目を逸らした。
「パスタにするね。」
話題を変えるようにそう言い
正面からの視線を遮断するよう
調理に意識を向けた。