月の夜に
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「レディ達♡午後のティータイムにスペシャルドリンクとマフィンはどうだい?」
「あら、ありがとサンジ君。」
「いただくわ。」
「あ、ありがとう。」
昼下がりの甲板。
昼寝をしようかと芝生に腰掛けると
コックが女共におやつを出していた。
よく見る光景だが、俺が見るに
これがミドリとコックの今日の初会話だ。
昨日のように、毎日あれだけ俺の前で騒いでいるわりに、ミドリはいざグル眉を前にすると緊張してしまうのか、顔を見ることもできず一言二言会話を交わすだけで終わることがほとんどだ。
今だって、ロビンとナミにつられて礼を言っただけだ。
どうやら相当な恋愛下手らしい。
まぁ、それを俺がどうにかしてやろうとは思わないけどな。
ーーーーーー
「どうにかしてよ、ゾロ。」
「知らねぇよ。」
そして今夜もやっぱり現れたかと思えば
コックの野郎とうまく話せないことを自分でも悩んでいるらしく、いきなり相談してきやがった。
「もっと話したいのに、意識すると緊張しちゃって…変なこと言っちゃったらどうしようと思ったら言葉が出てこなくなっちゃうんだ。」
「だから、俺が知るかってんだ。そういうのは女部屋で相談しろ。」
「ロビンやナミには恥ずかしくてこんな相談できないよ。」
「俺には恥ずかしくねェのか。」
「不思議とゾロになら何でも話せるんだよね。なんだかお兄ちゃんみたいで。」
何も曇りのない笑顔を向けられながら言われた最後の一言が胸に刺さる。
「……俺は兄貴ねェ…」
「とにかく!どうしたらもっとサンジ君に近付けるかな?」
「んなの、俺にするみたいにガンガン話しかけりゃいいじゃねェか。俺からすりゃ、あんなアホ相手に何で緊張すんのかわかんねェ。」
「だって…好きな人の前ではできるだけ可愛い女の子になりたいじゃん。」
恥ずかしそうに俯き、頬を染めながら
目を泳がせる。
その仕草に体の中心が熱くなる。
と同時に、こんな表情をコイツにさせるのは
俺ではなくコックだけなんだと思うと
ぶつけようのない怒りのような感情が湧き上がってきた。
持っていた器具を置き
ベンチに座るミドリに詰め寄る。
「……俺はそのままのお前がいいけどな。」
真っ直ぐに目を見て、真剣な顔で伝えた。
一応、俺なりに勝負をかけたつもりだった。
そろそろ俺の気持ちにも気付きやがれ。
そういう願いも込めた一言だったが
「ありがと。ちょっと元気出た。さすがお兄ちゃん!」
バシっと腕を叩かれる。
コイツに遠回しな言い方は効果がないようだ。
いつもの満面の笑みで俺を見上げる。
「お礼に次、回数数えててあげるね。」
「……おう。」
いつも見てるから
俺が次に素振りをするってわかるんだな。
本当にずるい女だ。