可愛くない私とヤツの背中
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こんなことになるならダイエットしておくべきだった。
あの木苺のケーキも
美味しくてゾロの分までもらって食べてしまった。
「ごめんね。重いよね。」
「こんなんトレーニングにもならねェよ。」
いつも自分が見ているよりも高い目線。
歩くたびに揺れるゾロのピアス。
少し汗ばんだ首筋。
太ももに回された、硬く骨張ったたくましい腕。
何より
服の上からでもわかるくらいに鍛えられた
私を乗せる目の前の大きな背中。
ゾロの全てに
本人にも聞こえてしまいそうなほど
心臓がうるさくなる。
「……悪かったよ。」
「え?」
「俺がついていながら、怪我させちまった。」
背中越しにゾロの後悔の念が伝わってきた。
ゾロは私を助けてくれたのに。
何も謝ることなんてないのに。
「これは、私が鈍臭いからだよ。迷惑かけてるのは私の方。ごめんなさい。」
「なんだ、やけに素直だな。」
「私だって素直に謝ることくらいできます。」
「……さっきまで何怒ってた。」
「怒ってた?私が?」
「せっかくうまい酒と飯食わしてもらったのによ。」
「…怒ってなんかないよ。」
「みくびるな。お前のことなんか顔見りゃわかる。」
「………」
いきなりそんな彼氏みたいなセリフを吐かれて
顔が一気に熱くなり、言葉に詰まる。
「……俺が、あの女と仲良くやってんのが気に入らなかったかよ。」
「なっ!そ、そんなわけないでしょ!自惚れないで!」
「そうかよ。悪かったな。」
おんぶされていてよかった。
絶対今、私の顔真っ赤だし、動揺しすぎだし
こんな顔を見られていたら、気持ちがバレてしまう。
そして動揺したままの私は
また可愛くない言い方をしてしまうんだ。
「ゾロだってどうせ…」
「あ?」
「ああいう、綺麗で、か弱くて、素直な女性が好きなんでしょ。」
「勝手に決めるな。」
「じゃあどんな子がいいのよ。」
「どんなって…」
知りたい。
ゾロがどんな女の子を好きになるのか。
私はその理想に
少しでも近付くことができるのか。
「……強がってばっかで素直になれねェ、すぐ転ぶ女だな。」
「………。」
それって……
冗談で言ってる?
それとも……
「おい、港はどっちだ。」
「え?」
周りを見回すと、私たちはまた森の中だった。
「真っ直ぐな道だったはずなのにどうして森にいるの!?」
「知らねェ。俺は真っ直ぐ歩いてきた!」
「真っ直ぐ歩いたら港に着くはずなんだってば!」
「ぐっ、オイ、締めすぎだ!息ができねェ!」
怒ったフリをしながら
ゾロの太い首に抱き付いて、背中に顔を埋める。
笑顔が抑えられなかった。
ねぇ、ゾロ。
私、自惚れてもいいの?
今すぐ知りたい。ゾロの気持ち。
でも今は、もう少しこのままで。
結局この日、サニー号に着いたのは夜中だった。
…fin