愛すべき人 〜幸せになる時〜
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「ルフィ。」
辺りが夕陽に染まる頃。
いつものルフィの定位置、船首の上にいる彼に
声をかけた。
「よう、ミドリ。何だ?」
「私もそこ、乗ってみたい。」
「いいぞ!来い!」
ルフィに手を引かれて上に乗り、並んで座る。
人が乗るようには作られていない船首の上は
少しでも足を滑らせたら、すぐ横の海へ
落ちてしまいそう。
でも視界にいっぱいに海と空が広がり
全身で風を感じて気持ちいい。
ルフィがここを好きな気持ちもわかる。
「気持ちいい。」
「だろ?ここはおれの指定席なんだ。今日は特別だからな!」
特別。その言葉にドキッとする。
夕陽に照らされながら、髪を風になびかせて
嬉しそうに笑うルフィに鼓動が速くなる。
好き。
やっぱり好きだよ。
あなたが目の前に急に現れて
太陽のような笑顔を向けてくれたときから
ずっとずっと、あなたが好き。
言いたい。
言ったらあなたは、どんな顔をするかな。
笑ってくれるかな。
「……ルフィ——」
「なァ、さっきおれ、変だったよな。」
「え?」
「見張り台でよ。」
ルフィが急に真剣な顔つきで話し始めたので
私は伝えそびれてしまった。
「そ、そうかな…」
「おれはさ、あの時、ミドリをあの男から助け出したくて船に連れてきたんだ。」
「うん…」
「でもよ、なんかわかんねェけど、お前を見てるとおかしくなる。」
ルフィは広げた自分の左手を見つめて
そのままその手で、私の頬に触れた。
「なァ、あいつもこんなふうにお前に触ったのか?」
海風にさらされて冷えた私の頬に
ルフィの掌の熱が広がる。
「さっきおれがしたみたいな…こうギュッてするやつ。そういうの、されたりしたのかよ。」
両肩に手を置かれて、正面から向かい合う。
けど、ルフィは下を向いていて、表情が読めない。
肩を掴む手に力がこもって、心なしか少し震えてる。
少しの怒りと、不安と、戸惑い。
そして、私への感情。
ルフィの気持ちが伝わってきた。
——あんたが何かを感じてるなら、きっとそうなのよ。
ナミの言葉を思い出す。
私、自惚れてもいいのかな。
「ルフィ。」
手を伸ばして頬に添え、ルフィの顔を引き寄せて
唇を重ねた。
すぐに離すと、ルフィは見たこともないような
驚いた顔をしていた。
「好きだよ、ルフィ。一番好き。」
緊張と不安で、少し手が震えたけど
真っ直ぐに見つめてそう伝えると
ルフィは、フッといつもの笑顔に戻る。
「おれも、ミドリが一番すきだ。」
どちらからともなく、抱き締め合う。
「もうおれ以外とこういうことしたらダメだからな。」
「じゃあルフィも、私以外にこういうことしたらダメだよ?」
「当たり前だろ。したくなるのはお前だけだ。」
「……うん。」
夕陽に包まれながら
ルフィの体温を全身で感じるほどに
強く強く抱き締め合って
「なァ、さっきのもう一回。」
もう一度、口付けをした。
ルフィ。
いつか、あなたは私に聞いたね。
——お前、今あいつといて幸せか?
あの時はまだ
幸せの意味もちゃんとわかっていなかった。
海へ出て
あなたがそばにいて
今度こそ、幸せな毎日と思っていた。
けど
あなたを愛して
あなたに愛されているとわかった今
私は本物の幸せを手にしたよ。
…fin