愛すべき人 〜幸せになる時〜
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一週間もすれば
私はすっかり皆に溶け込んでいた。
「これでいいかな?」
「さすが、レストランで働いてただけあるな!」
「でもホールだったから、調理は得意じゃないの。」
「いやァ完璧だよ。」
「ありがとう。皆呼んでくるね。」
仕事は主に、食事時のサンジくんの手伝いや
船内の掃除、衣類の洗濯も進んでやり
見張りも任せてもらえるようになってきた。
「みんな〜!ご飯だよ!」
「おう!待ってたぜ!」
「ちょうどお腹空いてたところですー!」
「大モノ釣り上げるとこだったのによー。」
「期待してないわよ、サンジくんも。」
「今日のメニューは何かしら。」
「昨日ルフィさんが捕まえた海王類のシチューだよ。」
甲板にいた皆に声をかけたあと、船医室へ向かう。
「チョッパー。お昼ご飯だよ。」
「おう。すぐ行く。ミドリ、船酔いはどうだ?」
「チョッパーの薬のおかげでもうすっかり!ありがとね。」
「んな褒められても嬉しくねーぞ!」
あとゾロは、きっとトレーニング中。
「ゾロ、お昼ご飯できたよ。」
「お、もうそんな時間か。」
いつも寝てばかりのゾロとは、気兼ねなく
話せるようになるのに一番時間がかかったけど
こうやって普通に声をかけられるようになった。
最後に見張り台にいる
ルフィさんのところへ顔を出す。
いつもは匂いを嗅ぎつけて
一番にダイニングへ駆け付けるのに
この日は珍しく呼びに行くまで降りてこなかった。
「ルフィさん?ご飯できましたよ?」
見張り台であぐらを組み、考え事をしていたのか
何やら難しい顔をしている。
「ミドリ、お前なァ。」
ギロリと視線を向けられて、私は身構える。
「はい…」
「何でおれにだけその喋り方なんだ?」
何か不満そうな顔をしていると思ったら
私が原因だったようだ。
要は敬語をやめてほしいらしい。
「ごめんなさい。ルフィさんにはずっとこうだったし、いきなり直せなくて…それに船長さんだし。」
「直せなくても直せ!それにルフィさんじゃなくてルフィだ!」
「えっと…」
「呼んでみろ。」
さん付けに、敬語。
確かに、彼にだけなのは不自然だった。
そうすることで
私の中で彼との間に一線引いた気でいたけど
ルフィさんはそれを許してくれなかった。
「ル、ルフィ。」
「そうだ!忘れんなよ?」
「うん…」
こんなふうに名前を口にしただけで
胸がギュッと締め付けられる。
そんな私には気付きもせず
ルフィさんは屈託なく笑う。
「でもよ、ミドリがあいつらと楽しそうで、おれも嬉しいんだ。」
「ルフィさんがここに連れてきてくれたおかげだよ。」
「あ!また!もっかい呼んでみろ!」
あぁ、もうやめて。
口にするたびに
忘れようとする想いが大きくなりそうで怖い。
でも、真っ直ぐに見つめられる瞳から逃げらない。
「……ルフィ。」
視線を逸らせず、私も見つめ返しながら口にした。
途端、ルフィの顔から笑顔が消えた。