彼の場合は
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「サンジ。腹減った。」
「んなことよりルフィ、お前ミドリちゃんとはどうなったんだ?」
「あいつガンコでよォ。まだおれに惚れねェんだ。」
「まァそんな簡単にうまくいくとは思ってなかったが、お前好かれる努力はちゃんとしてんのか?」
「よくわかんねェ。」
「おれならそうだな。まず花を贈るな。」
「はな?」
「ナミさんが言ってたが明日あたり島に着くみたいだぜ。海上生活じゃ花なんて拝めねェし、買ってきてあげたらミドリちゃん喜ぶんじゃねェか?」
「花なんかうまくねェじゃねェか。」
「食うためじゃねェ!飾って愛でるんだ!」
「ミドリだってよ、花より食いもんがいいだろ。」
「てめェは全然わかってねェな…おれが横取りしちまうぞ。」
「大丈夫だ。ミドリが好きになるのはサンジじゃなくて、おれだからな。」
「だから、どっから来んだ。その自信は。」
「いいからおやつ作ってくれよ。」
ーーーーーーー
ウソップが珍しく大物を釣り上げた。
それをサンジ君が新鮮なうちにさばいてくれて
ダイニングのテーブルには数々のご馳走が並べられ
なんとなく今夜はそのまま宴になった。
「すげェじゃねェかウソップ!こんなデカい魚!」
「だろォ?おれ様にかかりゃァこんな魚、朝メシ前よ!」
「夕食前でしたけどね。ヨホホホ!」
「いいつまみだ。」
お酒の入った男達が盛り上がる中
私はナミ、ロビンと隅の方で食事を味わう。
「サンジ〜!おかわり!」
「またかよ!」
やっぱりいつも通りのルフィが視界に入ってきて
ため息が出る。
あの男のせいで、こちらはあまり食欲も
湧かないというのに。
「気になるんでしょ。」
「え?」
「ルフィ。」
「なっ……」
「いつも目で追ってるわ。」
「そ、そんなことないし!」
「そろそろ勝負がつきそうね。」
「だから違うってば!ちょっと飲み過ぎちゃった。酔い覚まししてくる。」
恐ろしいことに2人は全てを察しているようで
私は居心地が悪くなり、逃げるように外へ出た。
船内からは皆の楽しそうな笑い声が聞こえる。
本当なら私も
あの中に混ざって楽しく過ごしていたのに。
最近の私はルフィのことで悩んでばかりだ。
「ようミドリ。どうしたんだ?」
後ろから突然投げかけられた声にドキッとする。
振り返れば食べかけのお肉を片手にルフィが立っていた。
人の気も知らないでこの男は…
悩む気持ちはだんだんと怒りへ変わってくる。
「何でもない。酔い覚まし。」
「そろそろおれに惚れたか?」
「惚れてない!!」
つい、大きな声を出してしまった。
明らかに不機嫌な私に
さすがのルフィも黙り込んだ。
八つ当たりしても仕方ないのに
感情が不安定で、なんだか涙も出そう。
「ルフィが…好きなんて言うから……」
涙を堪えるように、甲板の柵に突っ伏して
ルフィから顔を隠した。
——と、足音が近付いてきて、すぐ隣で止まる。
「おれがお前を好きなのはおれの勝手だ。別に言う必要ねェと思ってたよ。最初は。」
珍しくルフィの声が低く静かで
真剣な話し方だったので顔を上げる。
「でもよォ、お前にもおれを好きになってほしくなっちまった。お前のこと好きすぎて、欲が出たんだ。」
海を見つめながら真剣に話すその横顔に
私の視線は釘付けになった。
言っていることは自分勝手だし
頬に食べかす付けてるくせに
悔しいくらいに、カッコいい。
と、突然ルフィがこちらを向いたので
私は焦って視線を落とす。
「何でそんな怒ってんのか知らねェけど、おれのせいなんだろ?悪かったよ。」
言いながら髪を撫でてくるルフィの掌が
大きくて、優しくて、熱くて、胸が高鳴る。
「早く機嫌直して、おれを好きになれよな!」
真剣な顔から一転、最後にはいつもの笑顔。
ズルい男。
さっきから抑えられないこの動悸は
きっとお酒のせいじゃない。
「……考えとく。」
ダイニングへ戻るルフィの背中に一言そう答えると
ルフィが振り返り、嬉しそうに笑った。