彼の場合は
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「なァサンジ。」
「おうルフィ。難しい顔してどうした。」
「お前がいつも言ってる”恋”ってのはどういうもんだ?」
「お!てめェもやっとそういうことに興味を持つようになったか。そうだな…恋ってのはその相手のことばかり考えちまって、顔を思い浮かべると胸が苦しくなってだな…」
「そいつに触りてェとか、おれのもんにしてェと思うのもそうか?」
「そりゃ完全に末期だな。いいか。そうなったらもう、自分の下心との戦いだ。相手を思いやれなきゃ先には進めねェぞ。」
「うーん…なんかよくわかんねェけど、まァわかった!ありがとう!」
「本当にわかってんのか、てめェ。」
「そんなことより、メシは?」
「まだだよ。向こう行ってろ。」
「……ルフィが恋ねェ…」
恋は
”惚れた方の負け”なんて、よく言うけれど——
〜彼の場合は〜
「おい!ミドリ!」
昼下がりの静かな海を行くサニー号。
私はナミとロビンと一緒に
甲板で食後のティータイムを楽しんでいた。
そこへ突然ルフィが現れたかと思うと
私に向かって突拍子もない一言を告げた。
「えっ…今、なんて?」
「だからよォ、お前が好きだっつったんだ。ちゃんと聞いてろよな〜。」
「なっ……」
この男は普段から自由奔放で
突然訳の分からないことを言い出すのは
いつものことだから、慣れた気でいたけど
まさかいきなり告白されるとは。
爆弾を落とされたように心臓が跳ね上がった。
返答に困ってナミやロビンに視線を送るけど
私たちには関係ないわ、とでも言わんばかりに
2人とも目を逸らし、すまし顔をしている。
さて困った。
いや、でもルフィのことだ。もしかしたら
本人は告白のつもりではないのかもしれない。
よくわからないけど、ルフィの中で仲間に
好きだと言う日なのかも。
うん、なんかそういうのやりそう。
「わ、私もルフィが好きだよ?」
「本当か?それちゃんと恋してるか?」
眉間に皺を寄せ、何やら不満げな表情の彼から
またしても爆弾が落とされた。
彼の口から”恋”なんて単語が出てくるとは。
「え〜っと……」
「ルフィ。じゃああなたはミドリに恋していて、今はそれを伝えに来たと言うことね。」
困り果てる私を前に
やっとロビンが助け舟を出してくれた。
「おう!そうだ。」
「あんたね、そういうのは2人のときにやりなさいよ。完全に私たち邪魔者じゃない。」
この場を去ろうというのか、カップを手に
立ち上がろうとするナミの腕を咄嗟に掴む。
「待ってナミ!今2人きりにされても私、どうしたらいいのか…」
「そんなのはっきり自分の気持ちを伝えるしかないでしょ。」
「えっと……」
「つまり、ミドリはルフィを好きだけど、恋はしていない、ということでいいのかしら?」
「うーん…そういうふうに考えたことなくて……」
「はい、じゃあこの話は終わり。ルフィは諦めなさい。」
「なんで?」
「だってミドリにその気はないのよ。」
「そんなのよォ、これからおれに惚れればいいんだろ。」
またもや突拍子もない一言を自信満々に言われ
私たちは言葉を失う。
「勝負だぞ!ミドリ!」
「勝負?」
「お前がおれに惚れたら、おれの勝ちだ!」
「なんでこの流れで勝負になるのよ。」
「本当にルフィは面白いわね。」
呆れるナミと
その横でロビンは楽しそうに笑っていた。
「わかったな!勝負だ!」
言葉を失ったままの私に向かって
手を出してきたので、逆らうことが出来ず
私は流されるままにその手を掴む。
「どうなったら私の勝ちなの?」
「そりゃァ、おれがお前を諦めたときだ。」
しししし、といつもの笑顔を最後に見せて
満足そうに去っていく。
この男の諦めの悪さは
私たちクルーが一番よく知っている。
……勝てる気がしない。