愛すべき人
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彼のことが大好きだった。
「好きだよミドリ。恋人になってくれ。」
最初はとても優しくて、私を大切にしてくれた。
「一緒に暮らそう。ずっとそばにいよう。」
そこから少しずつ、関係が変わっていった。
「仕事クビになった。次が見つかるまでの間だけ
ミドリ、仕事増やせないか?」
「大丈夫。私、頑張るよ。」
彼は仕事をしなくなって
家にも帰らないことが多くなった。
「仕事は?」
「探してるけど見つからねェんだよ!
いいからお前はもっと稼いでこいよ!」
彼が仕事なんて探していないことは
すぐに気付いた。
私が渡すお金で
他の女の人と遊んでいるのも知ってる。
暴力を振るわれたこともある。
それでも、バカな私は
いつかまた優しい彼に戻ってくれるかも…と
訪れるはずのないその”いつか”を待ち続けている。
ーーーーーー
「よう!ミドリ!」
「ルフィさん!いらっしゃい!」
あの日からルフィさんは毎日お店に来てくれて
もう一週間になる。
私もルフィさんが来ると休憩をもらって
一緒に食事を楽しんだ。
「悪いなミドリ。今日も宝払いだ!」
「大丈夫ですよ。仲間は見つかりましたか?」
「いいや。あいつらのことだから心配ねェけど
そろそろ本気で探さねェとな〜。」
「皆に会えたら、この島を出るんですか?」
「そうだな!」
……このまま見つからなければいいのに、なんて
こっそりと酷いことを考えてしまう私は
なんてわがままな女なんだろう。
ルフィさんはいつも
嘘のような冒険の話を聞かせてくれて
何の楽しみもなかった私の人生で
ルフィさんと過ごす時間はとても癒された。
このときを、失いたくない。
汗水流して稼いだお金も
お礼も言ってくれない彼に渡すより
嬉しそうにご飯を食べてくれる
ルフィさんの食事代に消えるほうが嬉しい。
私は確実に、この人に惹かれている。
心に生まれたこの気持ちの正体を知りながらも
気付いていないフリをしている。
だってルフィさんは
もうすぐここからいなくなってしまう。
「ミドリ、いるか?」
と、突然恋人が店へとやってきた。
こんなことは珍しくて
私はつい挙動不審になってしまう。
「ど、どうしたの?」
「金。」
「えっ……」
ルフィさんは私と彼のやりとりを
モグモグとお肉を口に頬張りながら
黙って聞いていた。