僕と×××(黒木庄左ヱ門)
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「土井先生、わからないことがあります。」
庄左ヱ門が土井の元を訪れたのは、本日の授業も終わった放課後のことだ。
自室で授業につかうプリントを整理していた時にやってきた庄左ヱ門に、土井は作業の手を止めて向き直る。
授業でわからないことでもあっただろうかと、土井は質問に来たことを感心した。いつもと変わらない庄左ヱ門の様子に、特におかしなところを感じなかったためである。
ところが続いて口から出た言葉に、土井やその場に居合わせた山田は度肝を抜かれることになる。
「ん?庄左ヱ門、授業でわからないことでもあったか?」
「いえ、それは大丈夫です。」
「じゃあ、なんだ?」
「はい、椿さんのことです。彼女には誰か特別なお相手がいるのでしょうか?」
「……は?」
それは土井にも答えられない難問であった。
椿の特別な相手……その答えは土井も知りたいくらいであるし、寧ろそこに入りたいくらいだ。
机に向かっていた山田も、思わず手を止めて庄左ヱ門を見る。
「僕は椿さんは歳の近い利吉さんや六年生の先輩方と仲が良いと思うのです。特に利吉さんは見た目もいいし実力もある、将来を考えるにはうってつけの相手です。それは六年生にも言えることで、プロの忍となったあかつきには実力、見た目共に利吉さんと同等に渡り合える立花先輩、食満先輩あたりが椿さんにはお似合いのように思います。」
庄左ヱ門の口は止まらない。
土井と山田は呆けた顔でそれを聞いている。
「もちろん日々の生活に刺激をという意味では七松先輩が叶えてくれそうですし、共に助け合えるという意味では善法寺先輩が合っていると思います。それに最近は五年生の鉢屋先輩も椿さんを狙っているという噂があります。つまり僕が言いたいのは、椿さんが将来一緒になりたいと思えるような相手はこんな身近にたくさんいらっしゃるということです。ですから椿さんが一体誰を選ぶのか、考えてもわからないのです。」
土井は助け船を求めるように山田を見るが、山田は我関せずとばかりに目を伏せる。
「……庄左ヱ門の考えはわかった。だが、それを私に聞いたところで答えは出せないんだが…」
「はい、もちろん存じています。だからこうして土井先生に聞いているのです。」
「何が言いたいんだ?」
「僕が考えている椿さんのお相手候補の中に、土井先生は入られているのでしょうか?」
「え…」
庄左ヱ門の問いに山田は吹き出しそうになるのを必死に堪える。
「先程申し上げたように、利吉さんや先輩方は大変魅力的だと思います。ですが僕はそれ以上に、土井先生が椿さんのお相手としては最も相応しい。そう感じています。土井先生が先輩方と圧倒的に違う点は、大人であるということです。大人としての経験の多さや懐の深さ、余裕のある態度だったり包容力であったり。椿さんが全てを任せてついていきたいと思えるような要素が土井先生にはあると考えています。」
庄左ヱ門のべた褒めに流石の土井も気恥ずかしくなる。
「わ、わかった!もうそれ以上言わなくていい!」
「ではお答え頂けますか?土井先生は椿さんを将来的な意味での相手として、お考えですか?」
「う…」
真剣な表情の庄左ヱ門に、土井はたじろぐ。
椿のことはそういう目で見ていることは確かである。だが庄左ヱ門に正直な気持ちを言うのは気が引けた。
相手は十五も歳が下の、自分の生徒なのだから。
「……授業に関係のない質問には答えられない。」
「やはりそうですか。そう言われるだろうとは思っていましたが。」
熱弁をふるっていたわりには、庄左ヱ門はあっさりと取り止める。
「しかしなぜ急に、そんなことを言い出したんだ?」
珍しいことだと思った。
は組の中では唯一の、いや飛び抜けて優秀な庄左ヱ門がまさか椿のことを話題に出すとは考えてもみなかった。
「それは相手を知らなければ、自分も立ち回れないからです。情報収集は忍の基本ですから。」
その言葉にピンときた山田は声に出して笑う。
「や、山田先生…」
「庄左ヱ門いいことを教えてやる。いや、いいことかどうかはお前次第だが……土井先生はお前の好敵手だよ。」
「ちょっと!?」
「そうですか。わかりました。山田先生、土井先生、お答え頂きありがとうございました。」
庄左ヱ門は丁寧にお辞儀をするとその場を去ろうとして立ち止まる。
「土井先生、これからは好敵手としてもよろしくお願いします。」
「はぁ?」
すっきりとした顔で去る庄左ヱ門とは反対に、土井はその複雑な心境を顔に出さずにはいられない。
静かに戸が閉められると土井は山田を恨めしそうに見る。
「山田先生、なんだってあんなことを……庄左ヱ門はまだ十歳の子供ですよ?」
「歳なんか関係ないさ。あいつの目は男の目だったからな。庄左ヱ門はお前さんの気持ちの大きさを推し測ろうとしたんだろ。半助もうかうかしてると、横取りされるぞ。」
「横取りって……私と椿さんはそんなのじゃ……」
「ないとは言わんだろ?彼女はそれだけ魅力があるからな。うちに来てもらいたいくらいだ。」
「やめてくださいよ。」
土井にとって庄左ヱ門の言葉は、痛い針となって胃を刺激するのであった。
庄左ヱ門が土井の元を訪れたのは、本日の授業も終わった放課後のことだ。
自室で授業につかうプリントを整理していた時にやってきた庄左ヱ門に、土井は作業の手を止めて向き直る。
授業でわからないことでもあっただろうかと、土井は質問に来たことを感心した。いつもと変わらない庄左ヱ門の様子に、特におかしなところを感じなかったためである。
ところが続いて口から出た言葉に、土井やその場に居合わせた山田は度肝を抜かれることになる。
「ん?庄左ヱ門、授業でわからないことでもあったか?」
「いえ、それは大丈夫です。」
「じゃあ、なんだ?」
「はい、椿さんのことです。彼女には誰か特別なお相手がいるのでしょうか?」
「……は?」
それは土井にも答えられない難問であった。
椿の特別な相手……その答えは土井も知りたいくらいであるし、寧ろそこに入りたいくらいだ。
机に向かっていた山田も、思わず手を止めて庄左ヱ門を見る。
「僕は椿さんは歳の近い利吉さんや六年生の先輩方と仲が良いと思うのです。特に利吉さんは見た目もいいし実力もある、将来を考えるにはうってつけの相手です。それは六年生にも言えることで、プロの忍となったあかつきには実力、見た目共に利吉さんと同等に渡り合える立花先輩、食満先輩あたりが椿さんにはお似合いのように思います。」
庄左ヱ門の口は止まらない。
土井と山田は呆けた顔でそれを聞いている。
「もちろん日々の生活に刺激をという意味では七松先輩が叶えてくれそうですし、共に助け合えるという意味では善法寺先輩が合っていると思います。それに最近は五年生の鉢屋先輩も椿さんを狙っているという噂があります。つまり僕が言いたいのは、椿さんが将来一緒になりたいと思えるような相手はこんな身近にたくさんいらっしゃるということです。ですから椿さんが一体誰を選ぶのか、考えてもわからないのです。」
土井は助け船を求めるように山田を見るが、山田は我関せずとばかりに目を伏せる。
「……庄左ヱ門の考えはわかった。だが、それを私に聞いたところで答えは出せないんだが…」
「はい、もちろん存じています。だからこうして土井先生に聞いているのです。」
「何が言いたいんだ?」
「僕が考えている椿さんのお相手候補の中に、土井先生は入られているのでしょうか?」
「え…」
庄左ヱ門の問いに山田は吹き出しそうになるのを必死に堪える。
「先程申し上げたように、利吉さんや先輩方は大変魅力的だと思います。ですが僕はそれ以上に、土井先生が椿さんのお相手としては最も相応しい。そう感じています。土井先生が先輩方と圧倒的に違う点は、大人であるということです。大人としての経験の多さや懐の深さ、余裕のある態度だったり包容力であったり。椿さんが全てを任せてついていきたいと思えるような要素が土井先生にはあると考えています。」
庄左ヱ門のべた褒めに流石の土井も気恥ずかしくなる。
「わ、わかった!もうそれ以上言わなくていい!」
「ではお答え頂けますか?土井先生は椿さんを将来的な意味での相手として、お考えですか?」
「う…」
真剣な表情の庄左ヱ門に、土井はたじろぐ。
椿のことはそういう目で見ていることは確かである。だが庄左ヱ門に正直な気持ちを言うのは気が引けた。
相手は十五も歳が下の、自分の生徒なのだから。
「……授業に関係のない質問には答えられない。」
「やはりそうですか。そう言われるだろうとは思っていましたが。」
熱弁をふるっていたわりには、庄左ヱ門はあっさりと取り止める。
「しかしなぜ急に、そんなことを言い出したんだ?」
珍しいことだと思った。
は組の中では唯一の、いや飛び抜けて優秀な庄左ヱ門がまさか椿のことを話題に出すとは考えてもみなかった。
「それは相手を知らなければ、自分も立ち回れないからです。情報収集は忍の基本ですから。」
その言葉にピンときた山田は声に出して笑う。
「や、山田先生…」
「庄左ヱ門いいことを教えてやる。いや、いいことかどうかはお前次第だが……土井先生はお前の好敵手だよ。」
「ちょっと!?」
「そうですか。わかりました。山田先生、土井先生、お答え頂きありがとうございました。」
庄左ヱ門は丁寧にお辞儀をするとその場を去ろうとして立ち止まる。
「土井先生、これからは好敵手としてもよろしくお願いします。」
「はぁ?」
すっきりとした顔で去る庄左ヱ門とは反対に、土井はその複雑な心境を顔に出さずにはいられない。
静かに戸が閉められると土井は山田を恨めしそうに見る。
「山田先生、なんだってあんなことを……庄左ヱ門はまだ十歳の子供ですよ?」
「歳なんか関係ないさ。あいつの目は男の目だったからな。庄左ヱ門はお前さんの気持ちの大きさを推し測ろうとしたんだろ。半助もうかうかしてると、横取りされるぞ。」
「横取りって……私と椿さんはそんなのじゃ……」
「ないとは言わんだろ?彼女はそれだけ魅力があるからな。うちに来てもらいたいくらいだ。」
「やめてくださいよ。」
土井にとって庄左ヱ門の言葉は、痛い針となって胃を刺激するのであった。
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