1年生
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10.ミートパイをおひとついかが
カリカリと鉛筆を走らせる音や、パラパラとページを捲る音。あとは、ミーンミーンと鳴く不快な風物詩。時折思い出したかのように唸る空調設備の稼働音。
「……………」
待ち望んでいた夏休みに突入して、早一週間。
今日は、月に2回ほど回ってくる図書委員の当番の日だった。夏休み中であろうと図書室が開放されている以上それは変わらず…とはいえ仕事はほぼほぼ無く、たまに来る利用者相手に本の貸し借りの手続きをしたり、返却された本を棚に戻して整理をする程度である。基本的に当番中は自由なので、私は専ら新しく入ってきた新刊を読んだり、気が向いたら学校の課題をしたりして過ごしている。フル稼働している空調設備のおかげで暑い日も快適に過ごせるため、私はこの当番の日が嫌いではなかった。
「……ふあ」
いつもの通り図書室は、人もまばらでとても静かだ。図書室特有の古書の匂い。快適な環境に設定された空間は、いつも私に睡魔を呼び寄せる。いつもの習慣で本を開いてはいたものの、眠気が邪魔をしてさっきから一行も進めていない。
「(昨日夜中までゲームしてたから眠い…まあ自業自得だけど…)」
夏休みということもあり、最近は専ら新発売された家庭用ゲームに勤しんでいた。夏休みに一緒に遊ぶ友達もいない寂しい人間にとって、ゲームは唯一の娯楽であるのだ。
私は小さく頭を降り、本を閉じる。駄目だ、このままだと寝てしまう。
「(眠気覚ましに、本棚の整理でもしよう……)」
頭は未だスッキリしていないが、まあ動いているうちに目も冴えるだろう。私はカウンターを出て、本棚へと向かった。
「あの、すみません」
「…?」
並びがばらばらになっている児童書を直している最中、ふとそんな声が聞こえた。半ば無意識にそちらを向くと、1人の男子生徒と目があった。
「…なんでしょう」
目の前にいたのは、随分と爽やかそうな甘いマスクのイケメンであった。あまりのイケメンぷりに、耐性のない私は心の中で咄嗟に一歩引いた。いや、イケメンに話し掛けられたら大抵の人はビビるでしょ…決して私がコミュ障だからではない。
「先週くらいまでこの辺にあった本、借りたかったんだけど見つからなくて…貸出中かどうかって調べられたりする?」
人の良さそうな笑みを浮かべながらそう言ったイケメン。そういやよく見たらこの人、頻繁に図書室で見る顔だ。常連さんだ。
「ああ、はい。出来ますよ、タイトルとか分かります?」
場所柄、小声でそう返すと、彼はハッとした顔をして、直ぐに申し訳なさそうな顔をする。
「ああ…ごめん、『図書室はお静かに』だよな。あそこに貼ってある」
そう言った彼の目線の先には、だいぶ煤けたポスターがあった。何年前かの図書委員が制作したものだろう、『図書室はお静かに』というフレーズが明朝体で大きく書かれている。
「俺あんま図書室って空間慣れてなくて」
はは、と小声で笑う目の前の男子生徒のイケメンレベルがカンストし過ぎていてぐうの音も出ない。何だこの好青年。イケメンすぎて鳥肌立ちそう。
「…でも、結構いらしてませんか?」
「え?」
「あなた。えっと…」
「俺?俺は新開隼人」
「新開、君」
図らずも名前を知ってしまった。というかこれナンパっぽくない?大丈夫?と内心慌てたが彼が気分を害しているような様子はない。良かった、イケメンは心も広大だった。
「よく図書室にいらしてるような気がしたのですが、気のせいですかね」
「え、俺そんな悪目立ちしてたか?」
「あ、いや違うんです、決してそんなつもりじゃなくて、あの」
単に顔を覚えていたからそう伝えただけだったのだが、悪目立ちと捉えられてしまった。しかし変に弁解すればまるで私が虎視眈々とイケメンをロックオンしてたと思われそうでそれは嫌だ。はあ、コミュニケーションってなんでこんなに難しいんだろうか…。
「俺さあ、小中と部活ばっかやってて本とか図書室とは無縁の生活送ってたんだよね」
「え?」
「そしたら父親から“お前はもっと本を読め!”って怒られてさあ。それがきっかけで、高校入ってからちょっとずつ読むようになったんだよね」
私が返答に困っているのがわかったのか、新開君は自ら話題を広げてくれた。なんて人間できた人なんだろう。
「だからまだ読書歴も全然だし、図書室の利用の仕方も手探りっていうか…迷惑かけてたらごめんな」
「いえそんな、迷惑だなんて全然です!」
イケメンに謝罪をさせてしまうとは、ファンが物陰から見てたら殺されるんじゃないか私。嫌だまだ闇討ちされたくない。
「あ、あの、タイトル!探してる本検索してみます!」
「ああ、そうだったそうだった」
話を無理矢理元に戻す。彼も本題を思い出したようで、ポケットから白いメモ用紙のようなものを取り出した。
「えっと…これなんだけど」
「あ、三毛猫のですね」
「知ってる?」
「このシリーズは名作ですしね。怪談は三作目ですよね、ちょっと待っててください」
知ってる本でよかった。ここに来てようやくまともな対応が出来たような気がする。なんとかこのまま図書委員としての面子は保ちたい。
「みけねこ…かいだん…っと」
カウンターに戻り端末で検索をかける。残念ながら結果は貸出中であった。
「ごめんなさい、ちょうど貸出中みたいです」
「やっぱり?」
「一応返却予定日は来週の月曜日ですね」
「そっか、残念だな」
彼の元に戻り検索結果を伝えると、彼もおおよそ予想はしてたのか、大して落胆することもなくあっさりと納得した。
「ちなみにこのシリーズって、順番って関係ある?」
「うーん、基本的に一冊で完結しているので順不同でも読めなくはないですが…私としてはやっぱり発行順に読むのが無難だと思います」
「だよなあ」
うーん、と何か考え込むような仕草をするイケメン。そんな姿もいちいち絵になるなあなんて感嘆していると、次の瞬間、彼はいいこと思いついた!と言わんばかりのキラキラとした瞳で急にこちらを見てきた。
「おめさんのおすすめ、なんかない?」
まじかい。
初対面なのにグイグイくるなこのイケメン…やっぱりイケメンってパーソナルスペース広いのかな…コミュ力おばけ…?
「うーん…そうですねえ」
しかし聞かれた以上は精一杯答えなければ。図書委員としての腕の見せ所である。
「えっと…ミステリーがお好きなんですか?」
「うん、推理小説とかよく読むな」
「なるほど…同じ作者のなら私はこのマリオネットのとかが好きですね。あとは、別の作者でしたらこれとかがおススメです。読んだことありますか?」
「いや、タイトルも初めて知った。どんな話?」
「ハサミを使って連続殺人を行う主人公が出てくるんですけど…推理小説に詳しいわけじゃないので、読み慣れてる人からしたらどうなのかわかりませんけど…叙述トリック?って言うんですかね、少なくとも私は最後おお、ってなりました」
「へえ」
うーん、自分のプレゼン能力の低さに涙が出そうだ。いや、私の貧相な語彙力じゃ伝わらないけどもっとすごい面白いんだよ本当なんだよ…!
「あ、あと個人的にお腹が空きます。作中のミートパイが美味しそうで…」
「それいいな!」
「え?」
半ばやけくそで言ったアピールポイント(いや嘘は言ってないし実際に美味しそうなんですけどね!?)だったのだが、イケメンが予想以上に食いついてきたので驚いた。え、そこ?
「それ借りてもいいか?」
「あ、どうぞ」
言われるがまま彼に本を手渡す。とそこで、カウンターから呼び鈴の鳴る音が聞こえた。どうやら利用者が来ているらしい。
「ごめんなさい、それでは」
軽く会釈をして別れ、急いでカウンターに戻る。待たせてしまった手前、速やかに手続きを済まそうと頑張る。(といってもバーコードを読み取るだけなので、元々秒で終わる作業なのだが)
「2冊貸出ですね。夏休み中ですので、貸出期限は2週間です」
お決まりの台詞で手続きを終えたところで、先程別れたばかりのイケメンがカウンターにやってきた。手には先程私が渡した文庫本が握られている。
「おかげで助かったよ、ありがとな」
「いえいえそんな」
彼から学生証と本を受け取り、バーコードを読み取る。延滞している本もなし…と。
「1冊貸出ですね。夏休み中ですので貸出期限は2週間です」
「ああ」
「読み終えたらぜひ感想聞かせてくださいね」
つい言葉を付け加えてしまい、口に出してからしまったと後悔した。まあ、感想が気になるのは本当なのだが、本来ならこんな天下のイケメンと根暗で隠キャな私が同等に会話をしていい筈がないし、イケメンも今後私と顔なんて合わせたくもないだろう。調子に乗った、つらい。
「あ、いやその…」
私が弁解の意を述べようとした矢先のこと。やはりイケメンは対応も神だった。
「ああ!今度またおすすめ教えてな」
にかっと屈託のない爽やかな笑顔でそう答えたイケメン、もとい新開君。百パーセント社交辞令だろうに、そんなことは微塵も感じさせない完璧なスマイル。貴様は王子か。
「じゃあまた、仕事頑張ってな」
そうして颯爽と図書室を出て行くイケメンを見送る…とんでもないイケメンとお知り合いになってしまった。
「…眩しい」
住む世界の違う人種過ぎて軽く眩暈がする。新開隼人。
「(あれは絶対ファンクラブとかあるタイプの人間だ…極力近寄らないようにしよう)」
私はそう、心の中で密かに誓った。
カリカリと鉛筆を走らせる音や、パラパラとページを捲る音。あとは、ミーンミーンと鳴く不快な風物詩。時折思い出したかのように唸る空調設備の稼働音。
「……………」
待ち望んでいた夏休みに突入して、早一週間。
今日は、月に2回ほど回ってくる図書委員の当番の日だった。夏休み中であろうと図書室が開放されている以上それは変わらず…とはいえ仕事はほぼほぼ無く、たまに来る利用者相手に本の貸し借りの手続きをしたり、返却された本を棚に戻して整理をする程度である。基本的に当番中は自由なので、私は専ら新しく入ってきた新刊を読んだり、気が向いたら学校の課題をしたりして過ごしている。フル稼働している空調設備のおかげで暑い日も快適に過ごせるため、私はこの当番の日が嫌いではなかった。
「……ふあ」
いつもの通り図書室は、人もまばらでとても静かだ。図書室特有の古書の匂い。快適な環境に設定された空間は、いつも私に睡魔を呼び寄せる。いつもの習慣で本を開いてはいたものの、眠気が邪魔をしてさっきから一行も進めていない。
「(昨日夜中までゲームしてたから眠い…まあ自業自得だけど…)」
夏休みということもあり、最近は専ら新発売された家庭用ゲームに勤しんでいた。夏休みに一緒に遊ぶ友達もいない寂しい人間にとって、ゲームは唯一の娯楽であるのだ。
私は小さく頭を降り、本を閉じる。駄目だ、このままだと寝てしまう。
「(眠気覚ましに、本棚の整理でもしよう……)」
頭は未だスッキリしていないが、まあ動いているうちに目も冴えるだろう。私はカウンターを出て、本棚へと向かった。
「あの、すみません」
「…?」
並びがばらばらになっている児童書を直している最中、ふとそんな声が聞こえた。半ば無意識にそちらを向くと、1人の男子生徒と目があった。
「…なんでしょう」
目の前にいたのは、随分と爽やかそうな甘いマスクのイケメンであった。あまりのイケメンぷりに、耐性のない私は心の中で咄嗟に一歩引いた。いや、イケメンに話し掛けられたら大抵の人はビビるでしょ…決して私がコミュ障だからではない。
「先週くらいまでこの辺にあった本、借りたかったんだけど見つからなくて…貸出中かどうかって調べられたりする?」
人の良さそうな笑みを浮かべながらそう言ったイケメン。そういやよく見たらこの人、頻繁に図書室で見る顔だ。常連さんだ。
「ああ、はい。出来ますよ、タイトルとか分かります?」
場所柄、小声でそう返すと、彼はハッとした顔をして、直ぐに申し訳なさそうな顔をする。
「ああ…ごめん、『図書室はお静かに』だよな。あそこに貼ってある」
そう言った彼の目線の先には、だいぶ煤けたポスターがあった。何年前かの図書委員が制作したものだろう、『図書室はお静かに』というフレーズが明朝体で大きく書かれている。
「俺あんま図書室って空間慣れてなくて」
はは、と小声で笑う目の前の男子生徒のイケメンレベルがカンストし過ぎていてぐうの音も出ない。何だこの好青年。イケメンすぎて鳥肌立ちそう。
「…でも、結構いらしてませんか?」
「え?」
「あなた。えっと…」
「俺?俺は新開隼人」
「新開、君」
図らずも名前を知ってしまった。というかこれナンパっぽくない?大丈夫?と内心慌てたが彼が気分を害しているような様子はない。良かった、イケメンは心も広大だった。
「よく図書室にいらしてるような気がしたのですが、気のせいですかね」
「え、俺そんな悪目立ちしてたか?」
「あ、いや違うんです、決してそんなつもりじゃなくて、あの」
単に顔を覚えていたからそう伝えただけだったのだが、悪目立ちと捉えられてしまった。しかし変に弁解すればまるで私が虎視眈々とイケメンをロックオンしてたと思われそうでそれは嫌だ。はあ、コミュニケーションってなんでこんなに難しいんだろうか…。
「俺さあ、小中と部活ばっかやってて本とか図書室とは無縁の生活送ってたんだよね」
「え?」
「そしたら父親から“お前はもっと本を読め!”って怒られてさあ。それがきっかけで、高校入ってからちょっとずつ読むようになったんだよね」
私が返答に困っているのがわかったのか、新開君は自ら話題を広げてくれた。なんて人間できた人なんだろう。
「だからまだ読書歴も全然だし、図書室の利用の仕方も手探りっていうか…迷惑かけてたらごめんな」
「いえそんな、迷惑だなんて全然です!」
イケメンに謝罪をさせてしまうとは、ファンが物陰から見てたら殺されるんじゃないか私。嫌だまだ闇討ちされたくない。
「あ、あの、タイトル!探してる本検索してみます!」
「ああ、そうだったそうだった」
話を無理矢理元に戻す。彼も本題を思い出したようで、ポケットから白いメモ用紙のようなものを取り出した。
「えっと…これなんだけど」
「あ、三毛猫のですね」
「知ってる?」
「このシリーズは名作ですしね。怪談は三作目ですよね、ちょっと待っててください」
知ってる本でよかった。ここに来てようやくまともな対応が出来たような気がする。なんとかこのまま図書委員としての面子は保ちたい。
「みけねこ…かいだん…っと」
カウンターに戻り端末で検索をかける。残念ながら結果は貸出中であった。
「ごめんなさい、ちょうど貸出中みたいです」
「やっぱり?」
「一応返却予定日は来週の月曜日ですね」
「そっか、残念だな」
彼の元に戻り検索結果を伝えると、彼もおおよそ予想はしてたのか、大して落胆することもなくあっさりと納得した。
「ちなみにこのシリーズって、順番って関係ある?」
「うーん、基本的に一冊で完結しているので順不同でも読めなくはないですが…私としてはやっぱり発行順に読むのが無難だと思います」
「だよなあ」
うーん、と何か考え込むような仕草をするイケメン。そんな姿もいちいち絵になるなあなんて感嘆していると、次の瞬間、彼はいいこと思いついた!と言わんばかりのキラキラとした瞳で急にこちらを見てきた。
「おめさんのおすすめ、なんかない?」
まじかい。
初対面なのにグイグイくるなこのイケメン…やっぱりイケメンってパーソナルスペース広いのかな…コミュ力おばけ…?
「うーん…そうですねえ」
しかし聞かれた以上は精一杯答えなければ。図書委員としての腕の見せ所である。
「えっと…ミステリーがお好きなんですか?」
「うん、推理小説とかよく読むな」
「なるほど…同じ作者のなら私はこのマリオネットのとかが好きですね。あとは、別の作者でしたらこれとかがおススメです。読んだことありますか?」
「いや、タイトルも初めて知った。どんな話?」
「ハサミを使って連続殺人を行う主人公が出てくるんですけど…推理小説に詳しいわけじゃないので、読み慣れてる人からしたらどうなのかわかりませんけど…叙述トリック?って言うんですかね、少なくとも私は最後おお、ってなりました」
「へえ」
うーん、自分のプレゼン能力の低さに涙が出そうだ。いや、私の貧相な語彙力じゃ伝わらないけどもっとすごい面白いんだよ本当なんだよ…!
「あ、あと個人的にお腹が空きます。作中のミートパイが美味しそうで…」
「それいいな!」
「え?」
半ばやけくそで言ったアピールポイント(いや嘘は言ってないし実際に美味しそうなんですけどね!?)だったのだが、イケメンが予想以上に食いついてきたので驚いた。え、そこ?
「それ借りてもいいか?」
「あ、どうぞ」
言われるがまま彼に本を手渡す。とそこで、カウンターから呼び鈴の鳴る音が聞こえた。どうやら利用者が来ているらしい。
「ごめんなさい、それでは」
軽く会釈をして別れ、急いでカウンターに戻る。待たせてしまった手前、速やかに手続きを済まそうと頑張る。(といってもバーコードを読み取るだけなので、元々秒で終わる作業なのだが)
「2冊貸出ですね。夏休み中ですので、貸出期限は2週間です」
お決まりの台詞で手続きを終えたところで、先程別れたばかりのイケメンがカウンターにやってきた。手には先程私が渡した文庫本が握られている。
「おかげで助かったよ、ありがとな」
「いえいえそんな」
彼から学生証と本を受け取り、バーコードを読み取る。延滞している本もなし…と。
「1冊貸出ですね。夏休み中ですので貸出期限は2週間です」
「ああ」
「読み終えたらぜひ感想聞かせてくださいね」
つい言葉を付け加えてしまい、口に出してからしまったと後悔した。まあ、感想が気になるのは本当なのだが、本来ならこんな天下のイケメンと根暗で隠キャな私が同等に会話をしていい筈がないし、イケメンも今後私と顔なんて合わせたくもないだろう。調子に乗った、つらい。
「あ、いやその…」
私が弁解の意を述べようとした矢先のこと。やはりイケメンは対応も神だった。
「ああ!今度またおすすめ教えてな」
にかっと屈託のない爽やかな笑顔でそう答えたイケメン、もとい新開君。百パーセント社交辞令だろうに、そんなことは微塵も感じさせない完璧なスマイル。貴様は王子か。
「じゃあまた、仕事頑張ってな」
そうして颯爽と図書室を出て行くイケメンを見送る…とんでもないイケメンとお知り合いになってしまった。
「…眩しい」
住む世界の違う人種過ぎて軽く眩暈がする。新開隼人。
「(あれは絶対ファンクラブとかあるタイプの人間だ…極力近寄らないようにしよう)」
私はそう、心の中で密かに誓った。