1年生
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06.媚びない猫と怠惰な私
「樒原ちゃーん!お願いー!」
ホイッスルが体育館に響く。静まる観客と、その静寂を切り裂くような弾ける音。弧を描いて飛んで行ったそれは、誰の手にも触れることなく床に落ちた。
「…ふう、」
ホイッスルが再び鳴り、点数が動く。その瞬間、湧き上がる歓声。
ーーー26対24。
体育祭一日目、女子バレー。私のクラスは接戦の末、無事に一回戦を突破した。
×××××
「樒原ちゃん疲れ!凄い活躍だったね!」
「あ、ありがとうございます…」
試合が終わり体育館の隅で水分補給をしていると、突然クラスメイトの女子に囲まれた。あまり話したことがない子も多く、私は完全に戸惑っていた。ほら、だって私コミュ障だから。
「樒原ちゃんがそんなに運動できるとは思わなかった!意外!」
「いやいや、全然そんなことないですよお。勝てたのは他の人達が頑張ってくれたお陰だし…」
「えーでも最後のサーブとかすごかったよ!レシーブとかもすごい拾ってたし!」
「サーブもレシーブも本当にたまたまで…あとほら、バレーって自分のところに来たボールに集中すればいいから、走るの苦手な私でも比較的頑張れるっていうか…」
「なにそれ!ウケる!」
「私バスケとかサッカーとか絶対出来ないし…とにかく皆の足を引っ張らなくてホッとしてて…」
「またまたー!」
本当に心の底からの言葉なのだが、クラスメイトは信じていないらしい。私はあはは、と苦笑するしかなかった。
「疲れた……」
なぜ運動嫌いの私がこんなことをしているのかーーーそれは、今日が箱根学園年に一度の体育祭であるからだ。クラスの親睦を深める意味合いがあるのか、毎年この時期に行われているらしい。サッカーやバスケ等の種目が男女それぞれで用意されており、私は女子バレーに参加することになっていた。理由は、上記の通りである。
「二回戦は午後からだから!次も期待してるね!」
「あ、はい。頑張るねえ」
空気を読んでそう言ってはみたものの、体力のない私としては既に限界に近い。正直、疲れたからもう出たくない。授業が潰れるのは嬉しいが、今日明日とこのような運動が続くのかと思うと憂鬱である。
「そういえば男子サッカーも無事勝てたみたいだよー。うちのクラス結構順調だね」
正直クラスの勝ち負けにさほど興味はないのだが、それを素直に言ってしまう程馬鹿ではない。クラスを統括しているリーダー格の女の子の話に適当に相槌をうっていると、体育館入口付近からからお呼びがかかった。
「D組ー!次男子の野球があるから出番ない人はグラウンドで応援してー!」
野球、その言葉に心が騒めく。過剰に反応しすぎだというのは十分わかっているのだが、反応してしまうのだから仕方がない。
「次野球かー、相手どこだったかな」
事前に貰った対戦表を確認する。そこにはしっかりと『1年A組-1年D組』と記入されている。
「1年でぶつかり合いかー…まあいきなり上級生と当たるよりかは勝算あるか。樒原ちゃんは応援行く?」
「え、あ、うん。折角だし行こうかな」
1年A組、男子野球。
この文字に、ドクドクと急激に心拍数が上がる。そんなわけない、絶対ない。そう思っていても、心のどこかで期待している自分がいる。もしかしたら彼が。荒北靖友が出ているかもしれない、と。
「…過度な期待は、禁物」
「ん?なんか言った?」
「あ、いえなにも!」
期待はしていない。でも、もう一度マウンドに上がる彼が見れたら、どんなに幸せだろう。
私は、逸る気持ちを抑えてグラウンドへ向かった。
×××××
結果から言えば、そこに彼の姿はなかった。当然だ、だって彼は、もう野球をすることはできないのだから。
その現実を目の当たりにして、私の浮かれていた心はみるみると萎んでいった。期待はしていないなんて、嘘ばっかり。
「……………」
スポーツ観戦なんて趣味は全くない。それに強いて言うなら私は野球よりサッカー派だ。彼のいないグラウンドは、それが例え自分のクラスの試合だとしても、私を留めておけるほどの意味を成さない。私は、歓声の声に紛れてひっそりとその場を後にした。
とぼとぼと歩みを進めながら、私は考える。さてどうしたものか。幸い財布はある。先程の運動のおかげでお腹も空いていることだし、時間潰しがてら学校を抜け出して近場のコンビニまで軽食を買いに行ってもいいかもしれない。よし、そうしよう。
「……あ、」
と、そこまで考えたのち、私はあることに気付いた。それは本当に偶然のことで、以前、もうだいぶ前のことだけれども、この道を彼が通っていたということをたった今思い出したのだ。あの時は、そう。確か4時限目で、私が何気なくあの3階の教室からこの場所を眺めていた筈。
あの時は“今度行ってみようかな”なんて、彼の消えた行き先について考えていたが、結局今の今まで私がその行動を起こすことはなかった。忘れていたとも言えるし、そんな暇がなかった、とも言える。私の荒北靖友に対する執着も、所詮はその程度だったということだろうか。
しかしこの状況に気付いてしまった瞬間、私の興味関心は空腹やコンビニなんかよりも、彼のかつての行き先に向けられた。考えるより先に、私の足はあの時の彼と同じ道筋を辿ろうと動き始めていた。
「……………」
本当に不良の溜まり場だったらどうしよう、カツアゲとかされたらさすがに怖い、そもそも今そこに荒北靖友が居たらどうしよう、どんな顔をすればいいのだろう、迷い込んだ人畜無害な女生徒の振りをすればいいのだろうか、彼は私のことをきっと知らないけれど、私はうまく隠しきれるだろうか………そうやって次々と頭に浮かぶ思考は、留まるところを知らない。しかしながら私の足はそんなことなど御構い無しに歩みを進める。あるのかもわからない不確定要素よりも、ただ彼の世界を共有したいという馬鹿みたいな欲望が勝ったという、ただそれだけのことだった。
×××××
着いた先には、何もなかった。というよりも、どこにも行き着かなかった、という表現が正しいか。想像していたようなものは何一つない、行き止まりもないそこは、変哲のないただの道でしかなかった。不良も、もちろん荒北靖友もいない。私は内心とてもがっかりしたが、しかしこの陽の当たらなさといい、体育大会の喧騒が全く聞こえてこないほどの静けさといい、今後昼寝をするには最適の場所を見つけた気がする。こんな場所、知らなかった。
「ベンチもある」
もしかして、荒北靖友もここに座ったのだろうか。そんなストーカーじみたことをぼんやり思いながら、私は年季の入ったそのベンチに腰を下ろした。
風が心地いい。お弁当とか食べたくなる感じだ。うーん、お腹空いた。
結局、どうしよう。コンビニまで行くのもなんだか面倒になってしまった。食堂が開くまでまだ少し時間がある。動くのも疲れるし、ここで暫くのんびりしてようか。
と、ここまで考え、暫く瞳を閉じ休息を取る。耳をすますと微かに聞こえる喧騒をバックミュージックにして微睡む。いよいよ本格的に深い眠りに就くかと思われたそのとき、私はある視線に気がついた。何だろうと視界を動かすと、そこには一匹の黒猫がいた。
「………ねこだ」
茂みからこっそり顔を出す黒猫が、じっとこちらを見ている。
「ねこだ!!」
柄にもなく叫んでしまった。突然の意図しない出会いに、眠気という深い霧に覆われた脳は急激に覚醒し、同時に私のテンションはみるみる上昇する。
「なんてことだ…これはまさしく運命の出会い…!」
そう、何を隠そうこの私、以外と動物好きなのである。実家で犬を飼ってることもあり実際は猫よりも犬派だが、もふもふと温もりに飢えた今なら正直どんな動物でも愛せる自信があった。
「にゃんこ~おいで~~~ニャ~~~ニャ~~~」
茂みに向かって鳴き真似をする。側から見たら絶対にやばい人だと思われるだろうが、人気のないこの場所ならきっと大丈夫な筈(だと信じたい)。
黒猫はなかなか寄ってこない。しびれを切らした私は、こちらから距離を縮めることにする。一歩、二歩、三歩。
「あっ」
逃げられてしまった。無慈悲にも去っていく猫の後ろ姿を眺めながら、私は落胆の声を上げる。かなしみ。
まあ、猫は警戒心強いから仕方ない。仕方ないけれども、行き場をなくした左手が寂しく宙に浮かぶ姿は、とても滑稽で、私の心には、その恥ずかしさを打ち消すかのように新たな野望がむくむくと湧いてきた。
「次会ったときには絶対懐かせてみせるぞ…」
お目当てのものは何一つ無かったけれど、収穫はいくつかあった。そのとき、思い出したかのように私のお腹が空腹を訴えてきた。いつの間にか時計の針は正午を指していた。グラウンドを抜け出してきたのが11時半くらいだったから、既に30分ほど経ってしまっていることになる。うーん、お腹すいた。
「コンビニは無理だな」
残念ながら、箱根学園は坂の上にある。麓のコンビニまでは結構距離があるのだ。不便極まりないが、大抵のものは学食や購買で手に入るから、まあ仕方ない。幸い、食堂も丁度開き始めた頃だ。
「ご飯たべよ…」
午後の試合、面倒だなあ。
あくびをひとつして、私は踵を返す。途中思い出したように後ろを向いたが、当然猫はいなかった。勿論、荒北靖友もいなかった。
「樒原ちゃーん!お願いー!」
ホイッスルが体育館に響く。静まる観客と、その静寂を切り裂くような弾ける音。弧を描いて飛んで行ったそれは、誰の手にも触れることなく床に落ちた。
「…ふう、」
ホイッスルが再び鳴り、点数が動く。その瞬間、湧き上がる歓声。
ーーー26対24。
体育祭一日目、女子バレー。私のクラスは接戦の末、無事に一回戦を突破した。
×××××
「樒原ちゃん疲れ!凄い活躍だったね!」
「あ、ありがとうございます…」
試合が終わり体育館の隅で水分補給をしていると、突然クラスメイトの女子に囲まれた。あまり話したことがない子も多く、私は完全に戸惑っていた。ほら、だって私コミュ障だから。
「樒原ちゃんがそんなに運動できるとは思わなかった!意外!」
「いやいや、全然そんなことないですよお。勝てたのは他の人達が頑張ってくれたお陰だし…」
「えーでも最後のサーブとかすごかったよ!レシーブとかもすごい拾ってたし!」
「サーブもレシーブも本当にたまたまで…あとほら、バレーって自分のところに来たボールに集中すればいいから、走るの苦手な私でも比較的頑張れるっていうか…」
「なにそれ!ウケる!」
「私バスケとかサッカーとか絶対出来ないし…とにかく皆の足を引っ張らなくてホッとしてて…」
「またまたー!」
本当に心の底からの言葉なのだが、クラスメイトは信じていないらしい。私はあはは、と苦笑するしかなかった。
「疲れた……」
なぜ運動嫌いの私がこんなことをしているのかーーーそれは、今日が箱根学園年に一度の体育祭であるからだ。クラスの親睦を深める意味合いがあるのか、毎年この時期に行われているらしい。サッカーやバスケ等の種目が男女それぞれで用意されており、私は女子バレーに参加することになっていた。理由は、上記の通りである。
「二回戦は午後からだから!次も期待してるね!」
「あ、はい。頑張るねえ」
空気を読んでそう言ってはみたものの、体力のない私としては既に限界に近い。正直、疲れたからもう出たくない。授業が潰れるのは嬉しいが、今日明日とこのような運動が続くのかと思うと憂鬱である。
「そういえば男子サッカーも無事勝てたみたいだよー。うちのクラス結構順調だね」
正直クラスの勝ち負けにさほど興味はないのだが、それを素直に言ってしまう程馬鹿ではない。クラスを統括しているリーダー格の女の子の話に適当に相槌をうっていると、体育館入口付近からからお呼びがかかった。
「D組ー!次男子の野球があるから出番ない人はグラウンドで応援してー!」
野球、その言葉に心が騒めく。過剰に反応しすぎだというのは十分わかっているのだが、反応してしまうのだから仕方がない。
「次野球かー、相手どこだったかな」
事前に貰った対戦表を確認する。そこにはしっかりと『1年A組-1年D組』と記入されている。
「1年でぶつかり合いかー…まあいきなり上級生と当たるよりかは勝算あるか。樒原ちゃんは応援行く?」
「え、あ、うん。折角だし行こうかな」
1年A組、男子野球。
この文字に、ドクドクと急激に心拍数が上がる。そんなわけない、絶対ない。そう思っていても、心のどこかで期待している自分がいる。もしかしたら彼が。荒北靖友が出ているかもしれない、と。
「…過度な期待は、禁物」
「ん?なんか言った?」
「あ、いえなにも!」
期待はしていない。でも、もう一度マウンドに上がる彼が見れたら、どんなに幸せだろう。
私は、逸る気持ちを抑えてグラウンドへ向かった。
×××××
結果から言えば、そこに彼の姿はなかった。当然だ、だって彼は、もう野球をすることはできないのだから。
その現実を目の当たりにして、私の浮かれていた心はみるみると萎んでいった。期待はしていないなんて、嘘ばっかり。
「……………」
スポーツ観戦なんて趣味は全くない。それに強いて言うなら私は野球よりサッカー派だ。彼のいないグラウンドは、それが例え自分のクラスの試合だとしても、私を留めておけるほどの意味を成さない。私は、歓声の声に紛れてひっそりとその場を後にした。
とぼとぼと歩みを進めながら、私は考える。さてどうしたものか。幸い財布はある。先程の運動のおかげでお腹も空いていることだし、時間潰しがてら学校を抜け出して近場のコンビニまで軽食を買いに行ってもいいかもしれない。よし、そうしよう。
「……あ、」
と、そこまで考えたのち、私はあることに気付いた。それは本当に偶然のことで、以前、もうだいぶ前のことだけれども、この道を彼が通っていたということをたった今思い出したのだ。あの時は、そう。確か4時限目で、私が何気なくあの3階の教室からこの場所を眺めていた筈。
あの時は“今度行ってみようかな”なんて、彼の消えた行き先について考えていたが、結局今の今まで私がその行動を起こすことはなかった。忘れていたとも言えるし、そんな暇がなかった、とも言える。私の荒北靖友に対する執着も、所詮はその程度だったということだろうか。
しかしこの状況に気付いてしまった瞬間、私の興味関心は空腹やコンビニなんかよりも、彼のかつての行き先に向けられた。考えるより先に、私の足はあの時の彼と同じ道筋を辿ろうと動き始めていた。
「……………」
本当に不良の溜まり場だったらどうしよう、カツアゲとかされたらさすがに怖い、そもそも今そこに荒北靖友が居たらどうしよう、どんな顔をすればいいのだろう、迷い込んだ人畜無害な女生徒の振りをすればいいのだろうか、彼は私のことをきっと知らないけれど、私はうまく隠しきれるだろうか………そうやって次々と頭に浮かぶ思考は、留まるところを知らない。しかしながら私の足はそんなことなど御構い無しに歩みを進める。あるのかもわからない不確定要素よりも、ただ彼の世界を共有したいという馬鹿みたいな欲望が勝ったという、ただそれだけのことだった。
×××××
着いた先には、何もなかった。というよりも、どこにも行き着かなかった、という表現が正しいか。想像していたようなものは何一つない、行き止まりもないそこは、変哲のないただの道でしかなかった。不良も、もちろん荒北靖友もいない。私は内心とてもがっかりしたが、しかしこの陽の当たらなさといい、体育大会の喧騒が全く聞こえてこないほどの静けさといい、今後昼寝をするには最適の場所を見つけた気がする。こんな場所、知らなかった。
「ベンチもある」
もしかして、荒北靖友もここに座ったのだろうか。そんなストーカーじみたことをぼんやり思いながら、私は年季の入ったそのベンチに腰を下ろした。
風が心地いい。お弁当とか食べたくなる感じだ。うーん、お腹空いた。
結局、どうしよう。コンビニまで行くのもなんだか面倒になってしまった。食堂が開くまでまだ少し時間がある。動くのも疲れるし、ここで暫くのんびりしてようか。
と、ここまで考え、暫く瞳を閉じ休息を取る。耳をすますと微かに聞こえる喧騒をバックミュージックにして微睡む。いよいよ本格的に深い眠りに就くかと思われたそのとき、私はある視線に気がついた。何だろうと視界を動かすと、そこには一匹の黒猫がいた。
「………ねこだ」
茂みからこっそり顔を出す黒猫が、じっとこちらを見ている。
「ねこだ!!」
柄にもなく叫んでしまった。突然の意図しない出会いに、眠気という深い霧に覆われた脳は急激に覚醒し、同時に私のテンションはみるみる上昇する。
「なんてことだ…これはまさしく運命の出会い…!」
そう、何を隠そうこの私、以外と動物好きなのである。実家で犬を飼ってることもあり実際は猫よりも犬派だが、もふもふと温もりに飢えた今なら正直どんな動物でも愛せる自信があった。
「にゃんこ~おいで~~~ニャ~~~ニャ~~~」
茂みに向かって鳴き真似をする。側から見たら絶対にやばい人だと思われるだろうが、人気のないこの場所ならきっと大丈夫な筈(だと信じたい)。
黒猫はなかなか寄ってこない。しびれを切らした私は、こちらから距離を縮めることにする。一歩、二歩、三歩。
「あっ」
逃げられてしまった。無慈悲にも去っていく猫の後ろ姿を眺めながら、私は落胆の声を上げる。かなしみ。
まあ、猫は警戒心強いから仕方ない。仕方ないけれども、行き場をなくした左手が寂しく宙に浮かぶ姿は、とても滑稽で、私の心には、その恥ずかしさを打ち消すかのように新たな野望がむくむくと湧いてきた。
「次会ったときには絶対懐かせてみせるぞ…」
お目当てのものは何一つ無かったけれど、収穫はいくつかあった。そのとき、思い出したかのように私のお腹が空腹を訴えてきた。いつの間にか時計の針は正午を指していた。グラウンドを抜け出してきたのが11時半くらいだったから、既に30分ほど経ってしまっていることになる。うーん、お腹すいた。
「コンビニは無理だな」
残念ながら、箱根学園は坂の上にある。麓のコンビニまでは結構距離があるのだ。不便極まりないが、大抵のものは学食や購買で手に入るから、まあ仕方ない。幸い、食堂も丁度開き始めた頃だ。
「ご飯たべよ…」
午後の試合、面倒だなあ。
あくびをひとつして、私は踵を返す。途中思い出したように後ろを向いたが、当然猫はいなかった。勿論、荒北靖友もいなかった。