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「・・松本くん、だっけ?」

「同期なんですよ。俺。」


俺はさらっと答えた。
付き合ってはいるけど、もちろん公言はしていない。
社内だし、男同士だしね。

同期だから仲が良いって事にしてある。
まあ、それも嘘ではない。


「そうなんだ。・・彼、すごい男前だよね?」


潤くんについて何を聞かれるのかと身構えていた俺は、吹き出した。


「ぶっ。・・・大野さん、彼みたいなのがタイプですか?」

「え、いや、あの、そんなつもりじゃないんだけど。」


からかうように言うと、大野さんは真っ赤になってうろたえた。

何でこんな素直に反応してくれるんだろう。
からかいがいのある人だなあ。


「ははは。そんな焦んないでくださいよ。」

「・・・・ニノって呼ばれてた。」


大野さんはからかわれた事にムッとしたのか、少し拗ねたような表情で言った。


「ああ、同期はみんなそう呼ぶんですよ。」

「俺も呼んでいい?」

「・・・いいですけど。」


断る理由が見つからなくて頷くと、大野さんは嬉しそうに笑って俺の名を呼んだ。

ああ、もうホント可愛い。

大野さんが見せる表情や反応に、ときめいてしまう自分がいて。
いけないなと思っても、それは止められなくて。
だからと言って、それをどうこうするつもりはないけど。

ただ、潤くんに申し訳ないなという気持ちでいっぱいだった。
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