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「珍しいね。大野さん、遅刻ギリギリ。」

「え、あ、翔くん。はあ、間に合った。」


倒れるように椅子に座って、俺は息を整えた。

あの後、甘いキスを繰り返していたら、離れるのが辛くなって
最後はニノに追い出されるようにして、家を出た。

寝不足の上、駅から走ったから、足がガクガクしている。
そのおかげで何とか間に合った訳だけど。


「あれ。二宮くんは?」


キョロキョロと部屋を見渡して、翔くんは言った。


「ニノは午後から来るよ。なんか頼まれてたっけ?」

「うん。何日か前に頼んでた資料、もう出来てるかなと思って。」


そう言えば、そんな事を言ってたなと頭の片隅で思い出す。
資料はもう出来ているハズだけど、どこにあるのか俺には分からない。


「ああ。急ぎ?」

「ううん。午後でいいや。」

「悪いね。電話してもいいけど、ちょっと寝かせてやりたいから。」


何気なく言った俺の言葉に、翔くんは目を白黒させた。


「二宮くん、大野さん家にいるの?」

「え、ああ・・・まあ、そういうこと。」


やばい。
早速、バラしてしまった。

でも、翔くんとは一緒にいる時間が長いし、いつかは気付かれると思うから

ま、いっか。


「そっかあ。良かったね、大野さん。」


翔くんは俺の肩をバンバン叩きながら、嬉しそうに言った。

そんなに喜んでもらえると、俺まで嬉しくなるけど。

多分、ニノはそういうの知られたくないんだろうな。
松本くんと付き合ってた時も、ずいぶん気を使ってたからな。


「・・怒られそうだから、黙っててね?」

「ふははは。分かってるって。」


翔くんは笑いながら手を振って、部屋を出て行った。
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