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そんな事を思って頭を抱えていると、部屋の扉がノックされ、翔くんが顔を覗かせた。


「大野さん。お昼、食べた?」

「あ、ちょうど翔くんの事、思ってた。」

「へ?何で?」


翔くんは、大きな目を丸くして首を傾げた。

いつ見ても整った顔してんなあ。
本人は認めたがらないけど、この会社で一番の男前だと思う。


「いや、あん時、部長を翔くんに押しつけとけば良かったなって。」

「ふはは。嫌だよ。俺は課長くらいが働きやすいんだって。」


笑って翔くんはそう言った。

翔くんは一年後輩だけど、昔よく一緒に営業に回っていたから、気心が知れていて
時間が合えば、昼ご飯を一緒に食べる事が多い。

今日は簡単に社食で済ますことにして、俺たちは食堂に向かった。


「何食べようかなあ。肉食いたいなあ。」

「俺、カレー。」

「また?・・大野さん、この前もカレー食ってなかった?」

「好きだからいいんだよ。」


軽口を叩きながら注文して、商品を受け取っていると、食堂の隅に二宮くんを見つけた。

二宮くんの前には、びっくりするような男前が座っている。


「・・・俺、翔くんが一番の男前だと思ってたんだけどなあ。」

「急に何の話?」

「あれ、誰?」


怪訝な表情をした翔くんに、二宮くんがいる方向をこっそり伝えた。


「ああ。販促の松本くん。誰が見てもカッコイイよね。」

「うん。びっくりした。」


何となく気付かれないように、反対側の混み合っている場所に座った。

二宮くんはこっちに背を向けていたから表情は見えなかったけど。
松本くんがとても優しい目で二宮くんを見つめていたから。

邪魔しちゃいけないなって思ったんだ。
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