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玄関先で大野さんと繰り返し深いキスを交わした。

それは甘くて激しくて
気持ちよすぎて、腰が砕けそうだった。

大野さんの手は絶えず動いていて、今にも俺の服を脱がそうとしている。

いやいや、ここ玄関だし。
さすがに狭いでしょ。

キスの合間に、俺は大野さんの手を掴んだ。


「・・・ちょっと・・大野さん・・。」

「ああ、悪い。俺、全然余裕ないや。」


大野さんは照れたように頭を掻いた。

余裕がないのは俺も一緒だけど
そう言ってもらえると、何だか嬉しい。


「ふふふ。・・とりあえず靴、脱ぎません?」

「だな。」


二人で顔を見合わせて、笑った。

靴を脱いで部屋に入ると、大野さんが俺の手を引いて寝室へと案内してくれた。

繋いだその手は暖かくて
柄にもなく緊張していた俺の気持ちを和らげる。

ベッドとサイドテーブルがあるだけのシンプルな寝室。
窓から差し込む月明かりを頼りに、大野さんは俺の服を脱がせ始めた。

俺の履いていた下着を見て、嬉しそうに言う。


「お。ウチの商品、履いてんだ?」


俺は結構、自社製品の下着を履いてることが多い。

一応社員だから、履いていても損はないかなって思うし。
第一、サンプルでよく貰うからね。


「社員の鏡だと思いません?」

「・・今度この商品見たら、ニノの裸を思い浮かべそうだな。」

「ははは。・・・止めてくださいね。出先でそんな事、言うの。」


櫻井課長あたりには言いかねないと思って、釘を刺しておく。

大野さんが信頼してる人だから、付き合ってる事がバレるのは別にいいんだけど
身体の事まで知られるのは、ちょっと恥ずかしい。

あいまいに大野さんは笑って、俺の下着を脱がせた。
全裸の俺を立たせたまま、自分の服を手早く脱ぐ。

月明かりで見る大野さんの身体は、少し筋肉質で、男らしい色気を放っていた。


「俺が抱いていいんだよな?」

「・・俺に抱かれるつもりでした?」

「いや、そんなつもりはないけど。」

「じゃ、聞かなくていいじゃないですか。」


さっきまで、ヘタしたら玄関でヤリそうな勢いだったのに
今さら何の確認だよって、おかしくなる。

クスっと笑って両手を伸ばすと、やっと大野さんが俺の身体を抱きしめた。
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