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「・・・大野さん、降りますよ!」


その声にハッとした。

いつの間にか電車は俺の降りる駅に到着していて
気が付くと、ニノが俺の手を掴んで電車から降りていた。


「え、ニノも降りるの?」

「ええ、まあ。」


曖昧にニノは頷いて、どんどん改札へと歩いて行く。
俺は追いかけるように、その後を付いて行った。

ニノはどこに行くつもりなんだろう。
さっき電車で何か話してたっけな。
あまり話を聞いていなかった俺は、ニノの行動がさっぱり分からない。

でも、しばらくニノの後ろに付いて歩いて
俺の家に向かってるんだって、やっと気付いた。


「ニノ・・もしかして、俺ん家に向かってる?」

「今頃、気付きました?」


ニノは振り向いて、にっこりと笑った。

それは、いたずらが楽しくて仕方ないみたいな表情で
仕事中とはずいぶん違う印象で、ニノが幼く見える。

かわいいなあ。

思わず、俺はその笑顔に見惚れてしまった。


「さっきの話の続き、大野さん家でしようと思って。」

「うん。」


この不安を抱えたまま眠れそうになかったから
ちゃんと話をしてくれるんだと分かって、俺はホッとした。


マンションに着き、玄関の扉を開けると、靴も脱がないまま、ニノが言った。


「大野さん。飲み会の後、ここで言った事、覚えてるんですよね?」

「うん。」


あの日、酔った勢いで、泣きながらニノに告白した。

ニノが好きで好きで、どうしようもなかった。
その気持ちは、今も変わっていない。


「もう一度、言ってもらえますか?」


ニノは穏やかな表情で俺を見て、言った。

照れくさかったけど。
恥ずかしかったけど。
でも、忘れたことにした告白を、もう一度やり直せるんだと思って。

俺は精一杯の勇気を振り絞った。
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