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ニノに松本くんと別れたと聞いてから、1ヶ月が経った。
しばらくは不安定だったニノも、最近はすっかり落ち着いたようだ。

俺達の関係は、特に変わってはいない。


「ニノ。今日はラーメンな気分?」

「何ラーメンですか?」

「・・醤油。」

「うん。行きます。」


ひとつ変わったといえば、たまに晩飯を一緒に食べてくれるようになったこと。
食べ終わった後、近くの公園に寄り道してコーヒーを飲んで帰る。

それも、いつもの事だ。

まだ夜は寒いけど、梅の花が咲いていたりして、もう春なんだなって感じられる。


「桜が咲くのも、もうすぐですね。」

「花見に行きてえな。」

「いいですね、花見。」

「近所にすごい桜が綺麗な所があるんだよ。ニノに見せたい。」

「じゃ、今度行きましょうよ。」

「うん。」


何気ない会話だけど、桜を一緒に見る約束が出来たのが嬉しい。

言葉で表すと、ニノとの関係は何も変わっていないけど
以前よりは、距離が近くなったような気がする。
うぬぼれでなければ、ニノからの好意も時折感じられる。

今なら言ってもいいのかな。
ニノが好きって。
俺と付き合ってって。

あ、なんかドキドキしてきた。

気持ちを落ち着かせようと、俺は空き缶をゴミ箱に捨てて大きく伸びをした。


「ニノ。あの・・俺のこと、どう思ってる?」


突然の質問に、ニノは驚いたようだったけど
ふっと息を吐くように、笑って言った。


「・・・好きですよ。」

「え、本当?」

「聞き返されても困りますが。」


照れたように言うニノは、可愛くて
今すぐ攫って帰りたいと思う位だった。


「俺と付き合ってくれる?」

「それはできないです。」


・・・きっぱりと断られてしまった。

あれ。俺のこと好きって、そういう意味じゃなかった?
俺の早とちりだった?

混乱している俺を見て、ニノが苦笑した。


「同じ会社にいるあの人を、これ以上傷つけたくないんです。」

「別れたんだよね?」

「そうですけど。」


どうやら松本くんがニノのことを忘れるまで、俺と付き合うつもりはないらしい。

いつまで待てばいいんだろう。
案外、ニノは頑固だからな。
自分が納得するまで、絶対に俺とは付き合ってくれないだろう。

好きっていう気持ちだけじゃ、前には進めなくて
触れたいし、キスだって、その先だってしたい。

だから、ニノが納得できる方法を探そうと思った。
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