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あの日から、潤くんからの連絡は全くなくなった。

電話もメールもないし、顔を見ることもない。
そんな状態が続いて、もう1週間になる。

本当に諦めようとしてくれてるんだなと思うけど
会社にちゃんと来てるのかなと心配にもなる。

同じフロアに潤くんのいる販売促進部もあるのに、全く会わないのは不思議だ。
俺が動く時間帯は決まっているから、まあ避けられているんだろうけど。

俺は昼休みに相葉さんに声をかけた。


「相葉さん、昼飯食べに行かない?」

「行く、行く~!」


嬉しそうな相葉さんを連れて、会社からほど近い定食屋に入る。
社内の人があまり来ない穴場だ。


「俺、焼き魚定食。相葉さんは、唐揚げ定食でしょ?」

「決めつけんなよ。」


相葉さんは笑いながら、俺からメニューを奪った。


「あれ、違った?」

「・・・違わないけど。」


一通りメニューを見ても、やっぱり唐揚げ定食に勝るものはなかったようで
ちょっと拗ねたような表情の相葉さんを見て、笑ってしまった。

何ていうか、そう。
分かりやすくて、助かる。

決して悪い意味ではなくて
相葉さんの裏表のない明るさは、とても好感が持てる部分だ。

運ばれてきた定食を食べながら、俺は本題に入る。


「あのさあ、潤くん、最近見かけた?」

「昨日、二人で飲みに行ったよ。」

「え、そうなの?珍しいね。」


この二人だけで飲みに行ったっていうのは、最近あんまり聞いたことがなくて。
意外な組み合わせに、ちょっとビックリする。

俺を見ながら、相葉さんが言いづらそうに口を開いた。
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