O

新しく俺の秘書になったという二宮くんは、まだ少年の面影を残していた。

大丈夫かなあ。
俺、あんま仕事したくないんだけど。

実際の所、俺は細かい仕事のほとんどを秘書に任せていた。

データ集計とか、会議資料とか。
本当に頭を抱えるほど苦手だからね。

前任の秘書が急に辞めることになったから、彼は数日間の引継ぎしか受けてないハズだ。

まあしばらくは様子を見て、それから口出すか。

それくらいに、俺は考えていた。


「・・・二宮くん。明日の会議なんだけど。」

「あ、16時からですよね?資料できてますよ。」

「え、もう?」


サラッと答えた彼に驚いて、俺は思わず聞き返してしまった。
これから作ってって言おうとしたんだけどな。


「あ~、でも何か修正する所があるかもしれないから、目を通して下さいね。」


彼は、少し照れたような笑みを浮かべ、資料のコピーを俺に渡してくれた。

それは割と丁寧に作られていた。
資料に追加してほしいデータを伝えると、彼はすぐに頷いた。


「分かりました。1時間以内に仕上げます。」

「いや、いいよ。明日の会議に間に合えば。」

「あ、いや。時間設定はこっちの都合なんで。」


腕時計を見て、二宮くんはそう言った。

ああ、昼休みか。
誰かと約束してんのかな。

それから、本当に1時間で資料を完成させ、二宮くんは昼休みに入った。

完成した資料を眺めながら、ぼんやりと思う。

なんか掴みどころのない子だなあ。
まあ仕事はできそうだから、いいか。

そう。
俺は基本仕事をしないから、秘書は優秀な人をつけてくれって、人事に言ってあった。

だって、何だか部長の仕事って大変だし。
いくらメンズ部門の商品や人数が少なくても、データ集計が面倒な事に変わりはない。
会議や出張が多いのも苦痛だ。

ああ、俺どうして部長になるの引き受けちゃったんだろう。
今なお営業課の課長で、バリバリ仕事をしている翔くんに任せればよかった。
1/2ページ
スキ